11 / 37
海から来た少女
11
しおりを挟む彼女は近場の波間に突き出た団塊に腰かけ、
イルカの鳴き真似をして「ピュウ」と
鳴き始めた。
「何してるの?」
『ホイスル音』
「ホイスル音って?」
『イルカの声』
「へぇイルカの声は、
ホイスル音って言うのか」
『違うイルカの声の1つ。
イルカの声は全部で3つ。
クイック、ホイスル、バーク。
人間に聞こえるのはその中の一部の音。
イルカが会話する時に使う言葉』
そう言って彼女は笛をさしてつぶやく。
『これもホイスル音』
「でも聞こえなかったよ?」
『全部は聞こえない。
イルカの声の一部だけ』
そう言って彼女は、
再びイルカの鳴き真似をした。
それに答えるように二頭のイルカは、
「ピーピー」「キーキー」と鳴いていた。
「なんて言ってるの?」
『シグネチャーホイスル。
ホイスル音の1つ。
個体により異なる名前 』
「それでピーピーとキーキーなんだね」
『うん』
そう頷いた彼女の顔を見て、
そう言えば彼女の名前を知らないことに
気づいた。
「君の名前はなんて言うの?」
彼女は俯き腰かけた団塊を見つめて、
小さく呟いた。
『ノジュール』
聞きなれない名前だ。
外人なのだろうか。
「ノジュールか。
僕は真、海月真だよ」
『マコ 』
彼女は言いにくそうな発音で舌足らずに、
そう呟いた。
『言いにくい』
彼女はふてくされた様にふくれる。
「真はシンとも読むからシンでいいよ」
『シン?』
彼女はそう言ってから微笑んだ。
『シン』
僕は喜ぶ彼女にたずねる。
「君の名字はなんて言うの?」
『みょうじ?』
少女は不思議そうに僕を見る。
「えっと、名前の前につく名前だよ」
『ノジュールはノジュールだよ。
それ以上でも、それ以下でもないよ』
「そうなの?」
あまり深く聞かないほうが良いのかも
知れない。
「ノジュールちゃんだね。
かわいい名前だね」
『かわいい?』
彼女は少し考えてつぶやいた。
『愛してるの?』
いや愛って・・・
『美味しいの?』
いや美味しくいただこうとはしてないよ。
多分・・・
彼女は自分を指差しつぶやく。
『かわいい』
イルカを指差し囁く。
『かわいい』
僕を指差し囁く。
『かわいい』
『ノジュール、かわいい?』
「うんとってもキュートでかわいいよ」
彼女はうつむきつぶやく。
『かわいい』
僕は話題を変えようと少女に話しかけた。
「ところでノジュールちゃん。
僕にもそのイルカの鳴き真似できる?」
『もっと気やすくノジュール様でいいよ』
全然きやすくねぇ~
「それはちょっとね・・・ 」
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
【完結済み】VRゲームで遊んでいたら、謎の微笑み冒険者に捕獲されましたがイロイロおかしいです。<長編>
BBやっこ
SF
会社に、VRゲーム休があってゲームをしていた私。
自身の店でエンチャント付き魔道具の売れ行きもなかなか好調で。なかなか充実しているゲームライフ。
招待イベで魔術士として、冒険者の仕事を受けていた。『ミッションは王族を守れ』
同僚も招待され、大規模なイベントとなっていた。ランダムで配置された場所で敵を倒すお仕事だったのだが?
電脳神、カプセル。精神を異世界へ送るって映画の話ですか?!
MMS ~メタル・モンキー・サーガ~
千両文士
SF
エネルギー問題、環境問題、経済格差、疫病、収まらぬ紛争に戦争、少子高齢化・・・人類が直面するありとあらゆる問題を科学の力で解決すべく世界政府が協力して始まった『プロジェクト・エデン』
洋上に建造された大型研究施設人工島『エデン』に招致された若き大天才学者ミクラ・フトウは自身のサポートメカとしてその人格と知能を完全電子化複製した人工知能『ミクラ・ブレイン』を建造。
その迅速で的確な技術開発力と問題解決能力で矢継ぎ早に改善されていく世界で人類はバラ色の未来が確約されていた・・・はずだった。
突如人類に牙を剥き、暴走したミクラ・ブレインによる『人類救済計画』。
その指揮下で人類を滅ぼさんとする軍事戦闘用アンドロイドと直属配下の上位管理者アンドロイド6体を倒すべく人工島エデンに乗り込むのは・・・宿命に導かれた天才学者ミクラ・フトウの愛娘にしてレジスタンス軍特殊エージェント科学者、サン・フトウ博士とその相棒の戦闘用人型アンドロイドのモンキーマンであった!!
機械と人間のSF西遊記、ここに開幕!!
INNER NAUTS(インナーノーツ) 〜精神と異界の航海者〜
SunYoh
SF
ーー22世紀半ばーー
魂の源とされる精神世界「インナースペース」……その次元から無尽蔵のエネルギーを得ることを可能にした代償に、さまざまな災害や心身への未知の脅威が発生していた。
「インナーノーツ」は、時空を超越する船<アマテラス>を駆り、脅威の解消に「インナースペース」へ挑む。
<第一章 「誘い」>
粗筋
余剰次元活動艇<アマテラス>の最終試験となった有人起動試験は、原因不明のトラブルに見舞われ、中断を余儀なくされたが、同じ頃、「インナーノーツ」が所属する研究機関で保護していた少女「亜夢」にもまた異変が起こっていた……5年もの間、眠り続けていた彼女の深層無意識の中で何かが目覚めようとしている。
「インナースペース」のエネルギーを解放する特異な能力を秘めた亜夢の目覚めは、即ち、「インナースペース」のみならず、物質世界である「現象界(この世)」にも甚大な被害をもたらす可能性がある。
ーー亜夢が目覚める前に、この脅威を解消するーー
「インナーノーツ」は、この使命を胸に<アマテラス>を駆り、未知なる世界「インナースペース」へと旅立つ!
そこで彼らを待ち受けていたものとは……
※この物語はフィクションです。実際の国や団体などとは関係ありません。
※SFジャンルですが殆ど空想科学です。
※セルフレイティングに関して、若干抵触する可能性がある表現が含まれます。
※「小説家になろう」、「ノベルアップ+」でも連載中
※スピリチュアル系の内容を含みますが、特定の宗教団体等とは一切関係無く、布教、勧誘等を目的とした作品ではありません。
CREATED WORLD
猫手水晶
SF
惑星アケラは、大気汚染や森林伐採により、いずれ人類が住み続けることができなくなってしまう事がわかった。
惑星アケラに住む人類は絶滅を免れる為に、安全に生活を送れる場所を探す事が必要となった。
宇宙に人間が住める惑星を探そうという提案もあったが、惑星アケラの周りに人が住めるような環境の星はなく、見つける前に人類が絶滅してしまうだろうという理由で、現実性に欠けるものだった。
「人間が住めるような場所を自分で作ろう」という提案もあったが、資材や重力の方向の問題により、それも現実性に欠ける。
そこで科学者は「自分達で世界を構築するのなら、世界をそのまま宇宙に作るのではなく、自分達で『宇宙』にあたる空間を新たに作り出し、その空間で人間が生活できるようにすれば良いのではないか。」と。
BOYS HOLDER(ボーイズホルダー) 〜男の子をゲット&リリース&バトル!〜
命(ミコト)
SF
世紀の天才、大河内博士は、男の子の捕獲できる画期的なアイテム『ボーイズホルダー』を発明した!
どこにでもいる平凡な少女、朱美(あけみ)は博士からボーイズホルダーを託され、
永遠のライバル、美鳥(みどり)。おしゃまな妹、愛央(あお)といっしょに
今日もボーイズホルダーで大冒険!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる