蒼き臨界のストルジア

海から来た少女

３

　
僕が知らないだけで田舎いなかでは、
ありふれた生き物なのかも知れないが、
無知な僕には十分刺激的じゅうぶんしげきてきな未知の生物だった。


サメでも食くい千切ちぎりそうな大きな口に、
飛び魚うおの様な大きな羽をはやした
手足の無い爬虫類はちゃうるいのような異形いけいの何か。


深海魚の様ような不気味ぶきみさを漂ただよわす、
魚類らしき何かだった。

死んでいるようだが、
それでもあまり近づきたく無い
不気味さがあった。


僕はそのとき目の端はしにもう１つの影を捉とらえた。


少し離れた波打ち際ぎわで金属質の鉄塊てっかいが、
同じように打ち上げられていた。


その回りを寄せてはかえす海水が、
蛍光色けいこうしょくの青い光の波紋はもんを広げている。


その波紋の輝きが神秘的に、
その光景を彩いろどっていた。


僕はその光景に誘さそわれる様ように、
その打ち上げられた何かに近づいていった。


打ち上げられた鉄塊てっかいの回りを、
脈動みゃくどうする様にうねり漂ただよう蒼あおき海水。


神秘しんぴに彩いろどられ、
半壊したように横たわる鋼はがねの残骸ざんがい。


ポッドの様ような形の何かが波に洗われ、
廃棄はいきされたように寝そべっている。

カプセル型の乗り物らしき物には、
盾の様にも羽の様にも見える三本の足が
付いていた。


僕は中を確かめるため、
波の中に足を踏み入れる。


途端とたんに脈動みゃくどうする様ように広がる青の燐光りんこう。


その中で廃棄はいきされた鉄塊てっかいが、
仄ほのかな輪郭りんかくを浮かび上がらせた。


流線型りゅうせんけいのフォルム。


卵型の胴体の半分はガラス張ばりになっている。


そのガラス張ばりのカプセルが半場開き、
その内部から微かすかな光が漏れ出していた。


僕はまるで光に引き寄せられる虫の様に、
それに引き寄せられていった。


僕が近づくとその鉄皮てっぴの外郭がいかくで張り付いた、
トンボの様に目の飛び出した甲殻虫こうかくちゅうが、
まるでゴキブリの様に一斉いっせいに逃げ出した。


僕はその動きに誘さそわれるようにして、
ポッドの中を覗のぞき込んだ。


内部は機器で覆おおわれ、
そのコックピットらしき内部の座席で、
小柄こがらな少女が眠るようにうつ伏ぶせていた。


絹きぬのような銀髪が濡れて艶つやめき、
青い燐光りんこうに照てらされ、
艶なまめかしい光沢こうたくを放はなっている。