同居人は王子様。

mnkn

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でこぼこ同居生活。

#10

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さすが、自称片付けが得意な男。

面倒くさがりなあおいなら一週間かけても終わらない片付けを、一日足らずで終わらせてしまった。

なんだかんだ、ありがたいことに新居の家具の設置までレオンは手伝ってくれた。
うん。使えるものは使っておくのが一番だ。

そして無事、引っ越しも終わり、新生活が始まろうとしている。

もちろん、ご要望にあったキングサイズのベッドは却下した。
シングルベッドをレオンが使い、客用に置いていた布団をあおいが使うことになった。

夜も更けてきた頃。
明日から、東京で生活していく。この街で、初めて社会に出るんだ。そう思うと、なんだか緊張してまだあおいは目が冴えていた。

....ちょっと、水でも飲むかな。

布団から起き上がったのと同時に、隣のベッドから声がした。

「寝れねえの?」

その声に振り返ると、レオンが顔だけをこちらに向けていた。

「...あんたも、起きてたんだ」

「おう」

ここ数日、この男はベッドインしたら秒速で寝ていたくせに。珍しいなとあおいは思った。

「繊細だからな、俺は。環境が変わると眠れなくなる」

この態度のデカさで、よく自分は繊細だなんて言えるな。と思ったことは黙っておくことにした。



「ねえ、そういやあんたって社会人なだったっけ?」

そういえば、あおいは、ふと気になってみたことを聞いてみた。

「....お前、もしかしてそれで緊張して眠れないのか」

「ち、違うもん....!」

単純だなあ、と微笑んでからレオンは天井を向いた。
だが、その時の笑みはいつもと違って何だか影のある微笑みだった。

「働くというか....俺なりにきちんと公務はこなしてたつもりだった。いろいろあったからな、うちの国は」

そう呟いて、レオンは微かに溜め息をついた。

まるでその虚ろげな瞳は何かを思い出しているようだ。

何て言葉を返すべきか。
思い悩んでいたら、レオンが先に口を開いた。

「....まあいい。俺の話なんかやめよう。それよりも俺、この小さいスウェットとスーツだけじゃなくて普段着で着れる服がほしい」

「....た、確かに!スーツとそのちっちゃいのしか持ってないもんね」

明日、買いに行こうね!おやすみ!
そう言って、気まずさを感じていたあおいは勢いよく布団を被った。

あ、水飲み損ねた。まあいいか。

あおいは早く寝ようとキツく目を閉じた。



ベッドの隣から、あおいから寝息が聞こえてくる。

レオンは窓の外に視線を移した。

東京、というこの街では、星は見ることが出来なさそうだ。

「.....元気ですか?兄上」

ぽつりと呟いて、レオンもゆっくり目を瞑った。
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