猫被りしたらイけないよ♡

日南きの

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「はい、皆さんさようなら」


 先生の声と共に、六時間目の終わりのチャイムが鳴り響く。
 終礼が終わると、クラスの女子達は一目散に斗亜に駆け寄っていく。
 俺の席の後ろだけがやけに人口密度が高いように感じられる。


「斗亜くん学校案内する?♡」
「斗亜くん!♡」
「あー別にいい」


 皆揃って語尾にハートをつけたように斗亜の名前を呼ぶ。
 斗亜はやんわり断ってはいるものの、女子達に嫌そうな顔は見せていない。


(可愛い子ばっかに囲まれていい気分だろうな…もう帰ろ)


 俺は女子達に囲まれる斗亜から目を離し、鞄を持ち、教室を出た。
 当然斗亜は俺が帰ろうとしていることに気が付いていないし、女子達に囲まれているせいでこちらから斗亜の姿は見えない。


(何この引き止めてほしいダルいヤツみたいな…別に引き止められなくていいし)


 勝手に悲しくなって勝手にイライラして馬鹿みたいだな、俺。こんな気持ち、今までなったことないのに。


(でも一言言ってから帰るべきだったかも…)


「柊~!」
「…あ、理人」


 廊下を一人でとぼとぼと歩いていると、隣のクラスの友達、飯沼理人いいぬまりとに声を掛けられた。
 去年は同じクラスであったが、今年はクラスが離れてしまった。でも今でもクラスを跨いで仲が良い。


「理人、今から部活?」
「うん。正門辺り集合だからさ、正門まで一緒行こうぜ」
「うん」


 理人はサッカー部で、去年からずっと毎日部活に追われていて、とても忙しそうだ。
 そんな理人と正門まで一緒に行くことになった。


「そーいや柊のクラス、イケメンが転校してきたんだって?」
「っえ、なんで知ってるの」
「やっぱそうなんだな、秒で回ってきたぜ転校生の話」
「っあー…」


 やはり他のクラスでも斗亜は話題になっていたようだ。
 何故か、心臓がドキッとした。


(これ以上斗亜を狙う人が増えたら…)


 理人のクラス、可愛い子多いって噂だ。その子達が斗亜を狙ったら…


「柊、転校生と話した?どうだった?」
「う、うん、普通…」
「イケメンだって噂本当だったとはなー…有り得ないぐらいモテるんだろうな」
「ね、そうだね」


 モヤモヤする気持ちのまま歩いていると、いつの間にかもう昇降口まで来ていた。


「イケメンな転校生とか少女漫画かよー」
「うん…初日からモテモテだったもん」
「マジか、羨ましー…」


 俺と理人は外靴に履き替えながら会話を交わす。
 ここまで会話を進めておいて、実はその転校生と幼馴染だ、なんて言い難い。やはり俺は人と話すのは向いてないな、なんて自己嫌悪に陥る。


「…あ」


 靴を履き替えた俺は、ここであることに気が付いた。


「ん?急にどした」
「教室に自転車のカギ忘れた」
「うおー…ないと帰れないじゃん」
「ごめん理人、俺教室戻る。部活頑張って」
「オッケー。お、ありがと。お前も頑張れ笑」


 俺はせっかく履いた外靴を脱ぎ、教室へ自転車の鍵を取りに行くことになった。
 理人とは別れ、俺は再度廊下を折り返す。


(てか鍵、机の中に入ってるんだった…。また斗亜と女子達に逢いに行くようなもんじゃん…)


 さっき後にしたばっかりの教室が見えてきた。


(あれ、意外と廊下、静か…?)


 先程までの賑やかさと女子達の声はせず、廊下はむしろシーンと静まり返っている。


(もう皆帰ったのかな…?)
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