猫被りしたらイけないよ♡

日南きの

文字の大きさ
上 下
4 / 7

4

しおりを挟む
(この先生の声…眠くなるんだよな)


トンッ


(…ん?)


 後ろの席の斗亜の長い足が俺の椅子にぶつかった。
 

(斗亜、足長いから机に収まんないのかな…笑)


 俺はクスッと笑う。単なる間違いだと思い、俺は気にせず前を向く。


ドンッ


(!?)


 さっきより強く椅子に振動が来た。
 これはわざとだとすぐ分かった俺は、バッと後ろを振り返った。


「…ちょ、何…!?」


 俺は驚きながらも小声で斗亜へ言った。


「やっと喋った」
「喋ったって…今授業中なんですけど…!?」
「お前真面目だな笑 さすが猫被り笑」



 斗亜は俺を揶揄うように笑う。
 俺はそんな斗亜に呆れながらも、自分と同じ制服を着た斗亜を間近で初めて見た。


(…やっぱカッコイイとなんでも似合うんだな…)


 目にかかりそうでかからない薄い前髪、切れ長で猫のようなサラリとした目、反してクイッと可愛らしく上がった口角。
 いつも当たり前のように見てきたけど、改めて近くで見てみれば、本当に整った顔だな、と思う。


「そんでさ柊、教科書見せてくんね」
「えっ、いや、隣の席の人に見せてもらった方見えるでしょ」
「は、もう断った」
「断…!?」
「こら入崎さん、ちゃんと前向きなさい」


 古典の先生は授業を中断して、後ろを向いていた俺にそう言った。背筋が伸びた。
 学校では真面目にやっている俺だから、まさか皆の前で注意される日が来るとは思っていなかった。


「あ先生、俺こいつに教科書見せて貰ってました」


 恥ずかしさで小さくなりながら、体を教卓へ向けようとすると、斗亜が先生へそう言った。


「ああそうなの。入崎さんごめんなさいね」
「…えっ、あ、は、はい」


 そうして先生は再び授業を再開した。
 俺を庇うかのようにして斗亜は口実を作ってくれた。ていうか何で俺が怒られて話し始めた斗亜は怒られないんだよ!


「はい、お前のこと救ってやったからガチで教科書見して」
「…あーもう分かったよ…見えにくいとか言わないでね」


 斗亜のこういうとこ…ずるいな。扱いに慣れていると言うか…
 そして、斗亜は教科書を見えやすくするべく、机を俺の椅子に近付けてくる。


「つーか、普段のうるせぇお前知ってるから学校でのお前、なんか気持ちわりぃ笑」
「気持ち悪い言うなし!てか静かにして、話してんのバレる」
「お前の声の方うるせーよ。つーか教科書見えにくい」


 斗亜はそう言うと教科書を持つ俺の手をグイッと引き寄せた。


「も、もう、文句言わないでよ」
「こうすれば見える」


俺と斗亜の腕と腕が触れてしまう程に近い距離に俺はついドキドキしてしまう。


「てか近いって…絶対こうしなくても見えるでしょ」
「あ?見えねーからこうしてんの」


 しかも目線の先は教科書ではなくしっかり俺だ。授業する気ないなこの人…。


 そうしてその後も後ろの席の斗亜に何度も振り回されながらも、三時間目まで授業を終えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

王道学園にブラコンが乗り込んでいくぅ!

玉兎
BL
弟と同じ学校になるべく王道学園に編入した男の子のお話。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

不良高校に転校したら溺愛されて思ってたのと違う

らる
BL
幸せな家庭ですくすくと育ち普通の高校に通い楽しく毎日を過ごしている七瀬透。 唯一普通じゃない所は人たらしなふわふわ天然男子である。 そんな透は本で見た不良に憧れ、勢いで日本一と言われる不良学園に転校。 いったいどうなる!? [強くて怖い生徒会長]×[天然ふわふわボーイ]固定です。 ※更新頻度遅め。一日一話を目標にしてます。 ※誤字脱字は見つけ次第時間のある時修正します。それまではご了承ください。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

異世界に転生したらめちゃくちゃ嫌われてたけどMなので毎日楽しい

やこにく
BL
「穢らわしい!」「近づくな、この野郎!」「気持ち悪い」 異世界に転生したら、忌み人といわれて毎日罵られる有野 郁 (ありの ゆう)。 しかし、Mだから心無い言葉に興奮している! (美形に罵られるの・・・良い!) 美形だらけの異世界で忌み人として罵られ、冷たく扱われても逆に嬉しい主人公の話。騎士団が(嫌々)引き取 ることになるが、そこでも嫌われを悦ぶ。 主人公受け。攻めはちゃんとでてきます。(固定CPです) ドMな嫌われ異世界人受け×冷酷な副騎士団長攻めです。 初心者ですが、暖かく応援していただけると嬉しいです。

処理中です...