キミとふたり、ときはの恋。【いざよう月に、ただ想うこと】

冴月希衣@商業BL販売中

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キミとふたり、ときはの恋。【第四話】

いざよう月に、ただ想うこと【6−8】

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「あ、えーと……はい、またお伺いしますね。あの、お気をつけて帰られてください」
 せっかくのおばあ様のフォローだけど、お母さまにしたら不本意なはず。『そうですね』も『そうですか』も決して言えないから、曖昧に濁して再会の約束だけを口にすることにした。
 そんな私に、軽く苦笑を投げてよこされたお母さまだったけど。次にお母さまが視線を向けられたのは、武田くんだった。
「そこのヴァンパイアの君も、一緒にいらっしゃいよ。何度か、萌々を家まで送ってきてくれてる子でしょ? 煌の部活の後輩だって聞いてるし、君さえ良かったらだけど」
「えっ! 俺っすかっ?」
 突然のお母さまのお誘いに、ひとつ隣のベンチに座ってた武田くんが、びっくり顔で立ち上がった。
 ヴァンパイアのマントがふわっと風になびくのを見ながら、私もびっくり。
 休日に図書館でお勉強してる武田くんの追っかけを萌々ちゃんがしてるって話は、前に聞いてたから知ってるけど。一緒にお勉強した後、武田くんがお家に送ってあげてるのをお母さまはご存知だったのね。

 あら? もしかして、こういうのを『親公認』って言うのかしら。そうかしら?
 よくわかんない。判断がつかないから、今度奏人に聞いてみようっと。
「まぁ! 煌ちゃんと同じクラブの子なの?」
 お母さまの言葉で武田くんがバスケ部だと知ったおばあ様は、両手を打ち合わせて喜ばれた。
「ねぇ、僕? これからも煌ちゃんをよろしくね」
「はいっ! 僕、もちろん『よろしく』します。むしろ僕のほうが、宮さまにデロッデロに『よろしく』されたいですけどぉ。ばあちゃんが安心できるように、とにかく『よろしく』しまくっちゃいますね!」
 そして、いつもは相手が誰でも一人称は『俺』なのに。おばあ様の言葉を受けて『僕』キャラになった武田くんは、なぜか顔を真っ赤に紅潮させて『よろしく』を連呼。
 初対面とは思えないフランクな『ばあちゃん』呼びで会話し、おばあ様の親愛の証である『今度お店に来てね。シャンプーしてあげる』というお誘いの言葉をかけられていた。

 さらには、『年寄りの見舞いなんて辛気くさいだろうけどね。ボランティア気分で気軽に来れば?』とおっしゃったお母さまとは、メッセージアプリのIDをウキウキ交換してた。
 すごいわ、武田くん。
 これが『親公認』の範疇に入るのか、早く奏人に聞いて確認しなくちゃ。


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