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回想
しおりを挟む私が武術を身につけたのは、花村家の方針。一人娘を溺愛する過保護な父親によって知り合いの道場主に預けられ、小さな頃から鍛錬を積んできた。
でも、自分を守るために技を使ったことなんて無い。あの痴漢だって、私が被害にあったんじゃない。
さやかが狙われてた。
さやかを守りたくて、ただ夢中で、気がついたら男の手首を捻りあげてた。
私が手首を捻りあげたのと同時に次の駅に到着してしまい、私を引きずって車外に男が飛び出したから、無意識に投げ飛ばしてた。
でも逃走への執念からか、這うように階段に向かった男は、自ら階段下まで転げ落ちてしまった。大怪我は男の自業自得。
さやかも親も、私が傷害事件の当事者にならなかったことを喜んでたけど。本音では、さやかに酷いことをした男に、私の手で鉄槌を下せなかったことを今でも悔やんでる。
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