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第二章
プレゼント【2】
しおりを挟む「カレカ……聞き間違い?」
「じゃねーわっ!」
「え?」
「どこまでボケてんだよ。事実だろ。とっくに知ってることだろ!」
虚無から脱した後輩は、いつもの調子を取り戻した。それは良かったけど、新たな問題が私の上に降りかかってる。
カレカノ……が、事実? それを、とっくに知ってる?
〝誰〟が?
「……私たち?」
質問を間違えなかった。
正直、『誰のこと?』と聞きそうになった。でも、それを口にするのは駄目だ。その質問は違うと、もうひとりの私が止めてきた。
「ふん、間違えずに聞けたな」
掻きむしったせいでボサボサ頭のままドヤ顔を決めてる生意気な後輩が向けてきてた視線が、とても雄弁だったから。
私よりも長い睫毛を持つ大きな瞳が、真摯で熱い想いをそこに乗せていたから。
「いつから?」
でも、これは聞いてもいいと思う。むしろ、今、聞いておかないと。
「褒めた途端にそれかよ!」
「だって、全然、思い当たらない」
褒められてないのに『褒めた途端』って、おかしな言い草だ。そんなことを思いながら首を傾げる。私たち、いつから交際してることになってた?
「……部活のメッセージグループとは別に、個別に連絡取り合ってる」
「緊急連絡のために必要だからって無理やり交換した、あれのこと?」
「毎日、一緒に帰ってるだろ!」
「そうだけど。でもそれは、宇佐美くんが私の鞄を勝手に持って、家に着くまで返してくれないから」
「学校以外に、プライベートでも一緒に出かけてる!」
「あぁ、買い物よね? あれは、バスケ部の備品が足りなくなった時で。それも、女子マネと行く段取りをしてたら、いつも宇佐美くんが割り込んできて」
「今年は夏祭りも行っただろ! ふたりきりで!」
「あの時は、ひかると行く予定だったのが、あの子が急性虫垂炎になって。中止にしたのをなぜか宇佐美くんが知ってて無理やり連れ出された経緯だったような」
「正月に初詣も行った! そんで、亡くなった親友のお墓参りに、俺のこと誘ってくれたじゃん!」
あ……。
「そん時、『一番、仲良くしてる男の子なの』って、俺のこと紹介してくれた!」
した。宇佐美くんのこと、歌鈴に紹介した。けど、それは……。
「お墓参りの後。俺、告白したけど。あんたに」
「……っ」
「ちゃんと『好き』っつったけど。あんた、そのこと、無かったことにしてんの?」
「宇佐美くん……」
「あんた、俺が告った後、『ありがとう』って言ったじゃん。自分も同じ気持ちだって。あん時から、俺ら、カレカノじゃねぇの?」
「あの、あれは……」
「バレンタインだって、部員の中で俺だけに手作りチョコくれた! チョコを手作りしたの初めてだって言ってたの、あれ、嘘かっ? 俺だけが馬鹿みたいに浮かれてたのかよ。やっと想いが通じたって!」
哀しい叫びが迸った瞬間、私たちの間を風が吹き抜けていった。
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