イチャイチャ天国

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イチャイチャ天国・後編

【2−1】

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「あのう、かーくん?」
「ん?」
「えーと、それ、いつまで続くん?」
「嫌なのか?」
「えっ、嫌っていうか、その……ずっと同じことしてて飽きないのかなって思っただけで。嫌ではない、よ?」
「嫌じゃないなら、もう少し、な?」
「うん」
 あー、『うん』って言っちゃったよー。ほんとは、いつまで続くのかって聞いた後に、別の体勢を提案したかったのに。俺のばか。ヘタレ! 意志薄弱!
 せっかく土岐の家に来て、いい雰囲気になって、これからってとこだったのに。その十歩手前で寸止め中って、どういうこと?

 あーっ、土岐って、ずるい。コイツの声と顔面って、ほんとずるいよなぁ。
 こっちが、本心ではだめって言いたくても、『嫌なのか?』って甘いテノール付きで顔面を近づけるだけで、『嫌じゃない』って言わせるんだもん。
 その声と顔面に俺がめちゃ弱いってわかっててやってるわけじゃないところがさ、悔しくて、マジずるい。
「眉間にしわが寄ってる。気持ち良くないか?」
「え? あ、ううん。気持ちいいよ。すごく」
「それならいいんだが。疲れ、取れそうか?」
「うん、もちろんっ。てゆうか、お前のおかげでとっくに疲れは取れてるからさ。もう、起きてもいい?」
 いい? と聞きながら、相手の黒瞳をじっと見つめる。
 下から見上げてる理由は、膝枕してもらってるから。俺の希望じゃなく、土岐の命令で。
「起きたい? お前、さっき、嫌じゃないって言ったじゃないか」
「そう言ったけど。でも、俺ばっかりマッサージしてもらって申し訳ないんだよ。お前だって疲れてるだろ?」
 土岐の膝枕で頭皮マッサージしてもらうとか、めちゃご褒美だけど。確かに、すんげぇ気持ち良くて最高な気分だけど。俺ばっか気持ち良くしてもらうのは気が引けるし、そんなのはおかしいと思う。

「わかった。頑張ってるお前をねぎらいたくて、甘やかしてやりたくて俺が勝手にやってることでも、申し訳ないと思われてしまうなら仕方ない。あと五分で終わるから、それまで俺のわがままを聞いてくれ」
 わーん! ほら! 俺、こういうのに弱いんだよ! 
「わ、わかった。残り五分、よろしくお願いします」
「うん。お前は優しいな。ありがとう」
 違うよ。優しさが爆発してんのは、お前だよっ。
 ステーキ食ってマンションに戻ってすぐ、ぎゅうって抱きしめられた時は、そのまんまイチャイチャタイムに突入すんのかと思った。
 でも、一緒にカーペットに座るなり俺の身体は引き倒されて、ポテっと頭が乗った先は恋人の膝の上だった。頭皮マッサージしてやると言われて、それからずっと同じ体勢。
 もみもみ、もみもみ、もーみもみ。うっかり寝入っちゃいそうなのを我慢するのが大変くらい気持ち良くしてもらってるんだ。

 時折、左右に首を動かしつつ後頭部が重点的に揉まれてるから、気疲れからくる凝りや目の疲れを取ってくれようとしてくれてるんだと、わかる。
 これは、優しい恋人による癒しの時間。俺ばっかりが、いたわりを受ける、もどかしい時間。
 彼氏の一人暮らしのマンションに来てるのに、なんでキスのひとつもせずに延々と頭皮マッサージ受けてんのか今ひとつ謎だけど。薄目を開けて視界に入れた恋人は無表情な顔面にどこか満足げな様子を纏わせてるから、もうちょっとだけ黙ってお顔を拝見しとこうかな?


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