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キミとふたり、ときはの恋。【第五話】
冬萌に沈みゆく天花 —告白—【7一12】
しおりを挟む「素早い了承、ありがとう。じゃあ、ついでに、これも言っておこうかな。蒸し返すのは気が進まないけど、さっきの話のラスト、転校を決意した件で、『ずっと仲良くしてた友だちだから期待した』と君は言ったよね?」
あ、さぁちゃんとの、あれ。
「うん」
「君は、諦めと半々とはいえ、本気で期待もしていたんだろうけど。些細な……今は敢えて、些細な、と言わせてもらうよ。些細なことがきっかけで仲間外れにされたなら、〝もともと本当の友だちじゃなかった〟ってことだよ」
あ……。
「今は、学校生活、楽しいだろ? 他人に合わせて、気を使って手に入れてた楽しさとの違い、涼香はもうわかってるんじゃないか?」
他人に合わせて、気を使って……。確かに、女子校での私は、無理して皆に合わせてた。過去の説明として話してただけなのに、私は明言してないのに、そこに気づくなんて。
「うん、楽しい。奏人の言う通りよ。昔とは段違いに、今は充実してる。幸せだなぁって思う」
「自分が楽しいから、幸せだと思えるんだ。——そして、君が『楽しい、とても幸せだ』と、自然体で笑顔になれる毎日と未来は、俺が一緒に作っていくよ」
「奏人……」
「まだ、及第点には遠く及ばない彼氏だけどね。一緒に歩いていこう」
奏人……奏人っ。
「うん。一緒がいい。私こそ、欠点だらけの彼女だけど、一緒に歩くのは奏人がいい。よろしくお願いします」
手を取って歩んでいく未来を、ふたりで見てる。
私たちはまだ高校生で。これから先、たくさんの時間をかけて経験を積み、ゆっくりと大人になっていく。
そうして一人前になったその時、絶対に奏人の隣にいたい。立っていたい。
胸を張って一緒に笑っていられる私に、必ずなる。
「あの、奏人?」
「ん?」
「雰囲気たっぷりにプチ・プロポーズ的なやり取りしてロマンティック感にまだまだ浸っていたいところなんですが、どうにも我慢できないからミニピザとクレープをいただいてもいいかしらっ? 自業自得なんだけど、一度にいろんなカミングアウトした精神疲労のせいか、身体が急激に栄養を欲してるみたいなの。ぶっちゃけちゃうと、お腹ペッコペコ! なんですぅ!」
言い終わった途端に、盛大にお腹が鳴った。
「ふはっ! 了解。俺も腹が減ってたんだ。クレープは食後に回すとして、ミニピザだけじゃ足りないだろうから、ドリンクと一緒に追加で何か買って来るよ。焼肉バーガーとジャンバラヤ、どっちにする?」
「焼肉バーガー。辛味スパイスのトッピングを増し増しで」
「承知しました。少々お待ちくださいませ。——お嬢様」
うわぁ……!
声音に色気を乗せた彼氏が、ちょっと気取ったポーズで一礼。背中を向けた。今日の奏人のコーデはモノトーンだから、まるで執事さんのようで、私の心拍数は一気におかしなことになった。
こんな不意打ち、困る。
「こんな、珍しくお茶目な振る舞いしてくれちゃったら困るわ。ドキドキしちゃうし、じーんときちゃうじゃない」
私のためだ。
真面目な奏人が、普段はやらない執事なりきりポーズを決めてくれたりしたのは、たぶん、私を和ませるため。長い長い話を終えて、疲労感でヘロヘロな私を笑わせるため。
「どこが、及第点には遠く及ばない彼氏、なのかしら。満点じゃない? 百点満点、花丸彼氏よ」
私との落差が激しくて、泣けてくるわ。
「うーん……あ、そうだ。どうせ雲泥の差のカレカノなんだから、この際、あれもカミングアウトしちゃおうかしら」
そうしよう。それがいい。
「奏人に隠してること、まだあったのよって言っちゃおう」
カレカノになって、もうすぐ二年。なんとなく言いそびれたままだったけど、あの隠し事ももう解消しよう。
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