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Lovers -side Shingo-
愛が止まらない。【2】 #2
しおりを挟む「……はっ! いやいや! 騙されないぞ! 俺が打ち合わせに遅刻したの、たった五分じゃん。その間に出た意見だけで決定とかおかしいって。同好会の企画なんだから、俺も意見言いたい!」
危ねぇ。うっかり流されるとこだった。
今日の打ち合わせは、俺たちが所属してる『男子オンリー演劇同好会』のクリスマス発表会について。
今年はどんな企画にするか、個々の意見をまとめて、同好会リーダーの比奈瀬に提出するんだ。
企画発案はメンバーの担当。企画案からシナリオを書き、演出するのが比奈瀬の担当。それが『男子オンリー演劇同好会』の進行スタイルだ。だから当然、俺にも企画案を出す権利はある!
「あ? お前も意見を言いたい? いいけど……でも先にこれだけ言っとく。俺が、お前を主役に、と推薦した理由は俺だけの意見じゃない。ノートのここ、よく見ろ。この括弧で括った部分は、土岐に希望を訊いてきたんだ。アイツからのリクエストなんだけど、お前、これを無視するんだな?」
え……。
高階の指がちょんと乗ったノートの表面、括弧で括った部分と言われた箇所に視線が縫い止められた。ひと文字めから順に目で追う。
「その三、武田が主役、主役は武田(『ひたむきで一途、かーらーのー、ヤンデレ盲目愛』を熱演希望)……え? これが、土岐の希望? 俺へのリクエストって、高階、そう言った?」
「あぁ」
「マジ? この、熱演希望のくだりが? 俺にこれをやれって土岐が言ったん? マジ?」
「あぁ。俺の捏造だって疑ってるかもしれないけど、マジで土岐が……」
「やる!」
「えっ」
「俺、やる! 主役やるよ、俺! 引き受けたっ!」
俺、すげぇな。即答だ。判断が早いのはモテる男の五箇条に入ってるからな。さすが、俺!
「あ、そう。もうちょいゴネるかもって身構えてたけど、やっぱお前チョロ……いや、良かったよ。引き受けてくれて。なぁ、常陸?」
「ほんとだな。土岐の名前出しただけで呆れるくらいチョロくて笑っちま……いやいや、オファー受けてくれてサンキューな、武田。名演技、期待してるぜ」
「おう、任せろ。俺、どんな役でも張り切っちゃう」
なぜか苦笑気味の高階と常陸が声を低めて何やらモゴモゴ言ってるけど、主役への気合いに満ちてる俺には関係ない。ふたり同時に俺の肩に手を置いて励ますように「うんうん」と頷いてくるから、ピッと親指を立てて頼もしく宣言するのみだ。
「二百パーセント、期待に応えちゃうよんっ。なんたって土岐からの熱演希望だしな! めっちゃ頑張る。そんで土岐に褒めてもらうんだー。げへへっ! ご褒美あるかなー。うへへっ、うへへへっ!」
「おい、常陸。ちょっとこいつ大丈夫か。行き過ぎた幼なじみ愛がとうとう精神にきて、ありがたく逝っちまってるんじゃないか?」
「だな。こりゃ、相当やべぇわ。やかましくて残念だけど、なかなか良いヤツだったのに。惜しいことしたぜ」
「武田、お前のことは忘れない」
「武田、お前のことは忘れない」
「ちょい待てぃ! 勝手にしんみりと追憶ぶるんじゃねぇ! ふたり揃って手を合わせて拝むのもやめろ。慎吾ちゃん、バッチリ正常に生きとるわっ!」
全く。高階に常陸め。ちょっと土岐とのラブラブタイムを妄想してニヤけてただけなのに、そんな可愛くていじらしい俺様に対して、なんつー暴言だ。
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