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恋のバカンスは、予言通りにはいかない!?

ビーチボーイズ #5

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「あの俺、俺さっ……お前と触れ合えるなら正面からが、よくてっ。だから……あっ、あっ……あぁっ」

 『言ってみろ』って言ってくれたから、伝えてるのに。最後まで言えずに、岩場に両手をついたまま身をのけぞらせることになった。

 両方の乳首を弄っていた指が、粒を押し込めるようにグリグリと強く捏ね回したから。

 同時に、うなじに軽く歯が立てられて、そこから背すじにビリッとした痺れが走っていく。

「可愛いことを言う」

 うなじに唇を押しつけたまま土岐が呟いて、ふっと低くこもった笑いがその吐息で皮膚の薄い部分を熱く濡らした。

「ぁっ……はぁ、っ」

 熱い。熱いよ。波しぶきで濡れてるのに。俺の身体、すごく熱い。

「こっち向け」

 岩場に爪を立て、うなじから背すじへと走り抜けた快感を必死で逃がしていた身体が、くるんっと反転した。薄く笑った恋人の手によって。

「武田?」

 眼鏡越しじゃない素の黒瞳が色っぽく細められ、その視線が、ぼうっと見惚れていた俺の無防備な意識を艶やかに絡め取ってくる。

「後ろ向きのほうが一度にたくさん可愛がってやれるのに。それでも、俺と向かい合いたい?」

 甘やかな問いかけが零れる。俺を捕らえ、誘惑する響きだ。

 良かった。聞いてくれて。俺、これを言いたかったんだ。

「うん、向かい合いたい。正面から抱き合いたいよ。そんで、たくさんキスしたいん……っぁ、んっ」

 やっと言える、と張り切って伝えてたのに、その途中で、またさえぎられた。

 でも、いい。満足だ。望んでたものは、今、与えられた。

 正面からきつく抱きすくめてくる土岐にしがみついて、舌を絡ませ合うことができてるんだから。



「……ぁ……ふぁ、っ」

 嬉しい。

「土岐ぃ。俺、嬉しいっ」

 嬉しいよ。俺さ、こんな風にしたかったんだ。

 隙間なんてないくらい、ぴったりと素肌を密着させて、お前とこうして抱き合いたかった。

 互いの体温を、鼓動を、しっかりと確かめ合いながら熱く肌を重ねて、こんなキスをしたかった。

「はぁ……幸せ。すげぇ、嬉し……っ、ぁん」

「可愛いことばかり言うな、馬鹿」

 キスの合間、浅い息継ぎをしながら告げた本音は、息継ぎもそこそこに舌をねじ込んできた土岐によって、さえぎられた。

「ぁ、ん……馬鹿、じゃね……もん」

 ひどいよ。マジで幸せで嬉しくて。だから、正直に言ったのに。

「あ? 馬鹿だろうが。こんなに、俺を煽って」

「えっ、何? ぁ、あっ!」

 何? これっ、何?

 低く呟いて狂おしげにかき抱いてきた相手の手が、腰の下におりた。

「もう止まれないぞ。お前、責任取れよ?」

「え? あのっ、えとっ」

 えーと……えーと、えーと! あのさ、聞いていいかな? 今の俺の状態のこと、お尋ねしていいかな?

 腰をなぞっておりてきた指が俺の尻に食い込んで、その形がはっきりとわかるほどに、そこをきゅっと持ち上げられてるんだよ。

「あっ、ぁぁ、やっ」

 それだけじゃなくてさ。皮膚に食い込ませた指がサーフパンツの布地を摘んでクイッと引っ張ったかと思ったら、それが一気に上に捲り上げられた。

 つつっ、つまりですね! 俺ってば、今、お尻が丸見え! 

 つるんと丸見えなんだよ! ふんどしパンツ履いてるわけでもないのに! なんで、こんなことになってんのっ?


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