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恋のバカンスは、予言通りにはいかない!?

Only love #11

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 ――ぴちゃっ

「ぁっ……んっ」

 水音に重なって、俺の声が薄闇に溶けていく。鼻にかかった、甘ったるく恥ずかしい声だ。

 ベッドの上でひくんと身を反らした俺はもう、身を隠すものを何も身につけていない。

 既にバルコニーで帯が緩められ、申し訳程度に身につけていた浴衣だったけど、それはベッドサイドでキスをしながら土岐の手で剥ぎ取られた。

 続いて土岐も浴衣を脱ぎ捨て、昼間同様、鍛えられたその体躯を惜しげもなく晒して、俺の足の間にその身を置いている。

 両足を大きく広げた俺の中心の孔にローションが垂らされ、そこに恋人の指が触れている。

 しなやかで長い指が孔の浅い位置でくりくりと円を描き、俺を戦慄かせてから、次第に奥へ。ローションのヌメリを纏った指が、ゆっくりと埋め込まれてきてるんだ。

 くちゅっくちゅっと淫らな音を立てて次第に奥に挿し入れられてくる、優しい指。

「んぁ、っ……やっ」

 内壁を探るように侵入してくるその圧迫感に下腹がきゅっと固く引き絞られ、びくびくっと腰がのた打った。



「痛いか?」

「はぁ、っ……ぁ、だいじょ、ぶ」

 ぬちゅっと粘膜を刺激し、内側に侵入してきた指の圧迫感。それに耐えながら恋人を見上げれば、淡々とした表情の中に俺への気遣いが垣間見られる。

 いつも、こうだ。土岐は、こういう時、本当に優しい。

 身体を重ねた経験は、まだそんなに多いわけじゃないけど、行為の中で最初に俺の内側を暴く時のコイツはものすごく丁寧で優しいんだ。

 俺の感度を高めるために乳首を責める時は、わりと容赦のない土岐だけれど。この時ばかりは、俺を傷つけないよう細心の注意を払って、ゆっくりゆっくり、ほぐしてくれる。

 普段のドSの片鱗はどこにも見つけられない、すごく細やかで丁寧なほぐし方だから、途中で俺のほうが先にをあげてしまうくらいだ。

 丹念に執拗に、くちゅくちゅっと何度も指を出し入れされてると、途中から、後を引くような震えが下半身に走るんだ。

 それが堪らなくて、土岐の長い指でもっと強く中を擦りたててほしいって、浅ましくねだりたくなっちまうんだよ。

「あ、土岐? えと、俺、そろそろ大丈夫な気がするんだけど。どう、かな?」

 だから、ちょっとだけ遠回しにねだってみた。ほんとは、『そろそろ大丈夫』じゃなくて、『そろそろ限界』だから、なんだけどな!

 なのに、期待を込めて見上げた俺に返ってきたのは、眉をひそめた却下の表情。

「ん? まだ充分な柔らかさが足りないだろう? 確かに、ここのひくつきはかなり良い感じだが」

「やっ、そこっ……あんっ」

 ひくんっと、腰が揺らめいた。一気に指が引き抜かれ、同じ指の腹が孔の窄まりをくっくっと押してきたから。

 その反動で、ぬちゃっと濡れたそこが土岐の指を飲み込もうとうごめいたのが、自分でもわかる。

「……っぁ……はんっ」

「ん。ひくついてるだけじゃなく、俺の指を包むように咥え込んできた。この中をこうして暴くのは、ひさしぶりのはずなのに」

「あっ……はぁ、っ……あぁっ」

「どうしてだ? こんなに貪欲に、奥へと指を引き入れようとしてくるぞ。まだ、ほぐし足りないはずなのに。ほら」

「ひぁんっ……やっ、あぁ、ぁっ」

 色めいた響きの『ほら』が落ちてきた瞬間。びくんっと身がのけぞり、シーツに背中が擦れた。

 ぬちゅぬちゅと出し入れを再開した土岐の長い指が、くりゅんと大きく奥でひらめき、ゆっくりと粘膜を撫でる動きを見せてきたから。

「二本目も余裕で埋まっていくぞ。三本目、いくか? もっとトロトロにしてやる」

「んあっ、ああぁ、ぁんっ!」

 もう駄目。限界。これ以上は、無理。

「……っ、土岐ぃ。俺、気持ちいい。すげぇ気持ちいいからさ。もう、俺の中、ほぐれてるよ? とっくにトロットロだよ? だから……だからもう、きてっ?」

 両手を伸ばし、ストレートに懇願することにした。遠回しにしてたら、この丹念なほぐしが延々と続いてくんだよ。きっと。

 これ以上丁寧にされたら、俺、身悶えて気が狂っちゃう。

「土岐? 早く俺ん中に、きて? お前の熱いので、ぎちぎちに埋め尽くしてくれよっ」


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