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恋のバカンスは、予言通りにはいかない!?
Only love #2
しおりを挟む「……あ、土岐? その……ぁっ、ん」
「ん。ここも甘いな。お前は、どこもかしこも本当に甘い」
地上から打ち上がった炎が描く、菊花、土星、ヤシの葉。それぞれが、オレンジ、青紫、そして白銀の光の尾を夜空に長く伸ばしていく。
その断片を視界の端に映しながら、俺はひっきりなしに、ぴくんぴくんっと身を震わせてる。
えと、『味わう』って、こういうこと? ま、まぁ、わかってたけどなっ!
はしたなくも『味わって?』と口にした俺に目を細めて色っぽい笑みを向けてくれた土岐は、さっきからずっと俺に覆い被さってる。
唇だけじゃなく、頬、額、首筋、うなじ。至るところに、土岐の唇の熱が落とされてるんだ。
「少し、日焼けしたか?」
うなじに軽く吸いつかれ、横向きに身体を跳ねさせた俺の襟元に、恋人の指がすーっと入り込んだ。肌を辿るように指が滑り、浴衣の襟元が、くっと広げられていく。
片側の肩まではだけさせた後、土岐の指が動きを止めた。そして、鎖骨のすぐ下をちょんと軽く押さえられる。
「武田?」
秀麗な容貌が胸元に寄せられ、深い黒瞳が上目遣いで俺を見上げてきた。
「ここなら服で隠れるから、いいよな? 俺の痕、刻むぞ」
「……あ」
これって、夕方のあの『キスマークの約束』? 前と後ろ。どっちに、より多く痕を残してほしい? って、エロボイスで尋ねられたアレ。その確認じゃねっ?
てゆうかさ! 土岐、気にしてたのかな? 俺が鎖骨ペロリンに対して言ったこと。
『こんな見えるとこに痕つけるのは、やっぱ、やめてくんね?』
俺があんなこと言ったから、服で隠れる場所なら構わないだろうって確認してくれてるんだ。
へへっ。やっぱ土岐は優しい。強引な時もあるにはあるけど。ここ! って時には、こうして細やかな気遣いを向けてくれるんだもん。
今も、俺が黙ってるから待ってくれてる。俺が頷くのをじっと待ってくれてる。夜になったら容赦はしない、なんて言ってたくせに。俺の気持ちを優先して、待ってくれてるんだ。
だから、大好きな黒瞳を真っ直ぐに見つめながら、こくんと頷いた。
「うん、いいよ?」
小さく答えた直後、甘やかな笑みが降ってきて、チュッと口づけられた。頬、首筋へと、優しいタッチで唇が滑りおりていく。
ふふっ。肌に髪が擦れて、くすぐったい。
——ドン、ドーンッ
大きく打ち上がった色とりどりの大輪が夜空を彩り、一瞬のち、また空は夜の暗色に戻る。
力強く儚い光の花々を目に映しながら、土岐の背中に手を回した。鎖骨のすぐ下。そこにちゅうっと強く吸いつき、独占欲の証を俺に刻みつけてくれた相手に、はしたない言葉を告げるために。
キスマークは、花火と同じだ。綺麗に花開いても、時が経てば何もなかったかのように消えてしまう。でも、だからこそ。
「なぁ? そこ、もっとつけて。誰にも見られないようにするから。お前の痕、もっと俺に残して?」
花火よりももっと鮮やかに、散らしてくれていいから。
俺に、お前を刻みつけてくれよ。
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