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恋のバカンスは、予言通りにはいかない!?
Only love #1
しおりを挟む「あ、土岐。花火、始まっちゃっ……ん、ぁ……」
「そうだな。だが、こうしてても見えるだろ?」
「ん……ふ、っ」
――ドンッ、ドォン
次々と打ち上げられていく、盛大な光の花。
赤、オレンジ、黄色、緑に青、紫。夜空を鮮やかに染めていく色とりどりの刹那の光輝。確かに、ここからでも見えるよ。
けどさ。お前、全然解放してくれないじゃん。ずっとキスしてるじゃん?
だからさ。潮風に揺れるお前の髪越しに光の雫を垣間見るのが、せいぜいなんだよ?
夜空に大きく花開いてるはずの光の競演は、色彩の断片と、パラパラと弾け散らばる火花の音のみ。それを、俺たちが奏でる淫靡な水音を聞きながら堪能するしかない。
でも、仰向けになってる俺は少しは花火が見られるけど、土岐は全然見てねぇよな? 花火に、まるっと背中向けてんだもん。こんなんで、いいんかな?
波音に重なる打ち上げ音しか聞こえないんだよ。あとで後悔したりしねぇかな。
「んっ……あ、あのさ。お前、花火、見てないよ?」
「構わない。今のお前を見てるほうが、俺得だ」
「んん、っ……ふ、っ」
花火、眺めなくていいのか? そう続けるはずだった俺の声は、熱い吐息にまた閉じ込められた。
なぁ? 土岐ってば、『俺得』って言葉の意味、間違ってねぇかな。
「……っ、はぁ、ぁ」
けど、土岐の『俺得』の価値観について質問することはできなかった。そのタイミングを俺は逃したんだ。問いかけようと唇を開いた瞬間、熱く濡れた舌をまた押し込まれたから。
「ふぁ……ん、ぅ」
深く唇が塞がれ、口腔を舌で掻き回される。口蓋や歯列の裏側を丁寧に舌で辿られて、そのヌルついた感触に、ひくひくと背すじが引きつった。
はあぁ……マジ、堪んない。
なんで、キスだけでこんなに気持ちいいんだろう。
「武田。お前の舌、甘くて気持ちいいな。もっと、味わいたい。俺に寄越せ」
「っぁ、ん……んんっ」
低められた甘い艶声。それが、唇を食みながら落とされた。
その声音に込められた熱情に、俺の中の何か。たぶん、躊躇いとか疑問、遠慮といったストッパーが全部、カチッと音を立てて外れた気がした。
俺のどこが甘いのか、土岐が何言ってんのか全然わかんねぇけど。せっかくの花火、観なくてもいいんかなって、やっぱり思うけど。
それから! ここ、バルコニーですけど? 超開放的空間ですけど、大丈夫? ってツッコミもあるにはあるけど。
コイツが俺を欲しがってくれるんなら、それでいい。別にいい。
こんな俺でいいなら、全部あげる。
「うん、いいよ。いくらでも味わって?」
とことん、味わい尽くせばいい。
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