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恋のバカンスは、予言通りにはいかない!?
ビーチボーイズ #6
しおりを挟む「……あ、あぁ、っ」
身体が跳ねる。ひくんっ、と。
サーフパンツを上まできつく捲り上げられ、まるでふんどしのように丸く露わにされた尻に、潮風と日光が当たってる。
さらに、そこを土岐の指がそろりと撫で、ゆっくりと這う。それら全てを、肌で感じている。
自分が置かれてる状況と、土岐の指が目指してる場所を思えば、身体は勝手に疼いて、ひくひくと震えていくんだ。
でも俺、なんでこんなことになってるんだろう? 土岐は、ここで俺に何をするつもりなんだろう。
聞かなくちゃ。誰もいないとはいえ、オープンな場所である岩場でこんなことされてる理由を聞かなくちゃ。
「……っ、土岐ぃ。ゆ、びっ、指がっ」
そう思うけど、俺の口から漏れ出るのは、甘く震えた喘ぎだけ。ひくんと震えた腰を揺らしながら、断続的に声をあげるだけ。
尻の丸みに沿って這っていた土岐の指が後ろの孔まで伸び、その周囲をそっとなぞり始めたから。
——あぁ、やっぱり、そこに辿りついたんだ。
そう、頭の片隅で、なぜか納得したから。
「はっ……んぅ」
触れるか、触れないか。窄まりの縁の浅く微妙な位置で、土岐の指が滑らかな感触でうごめく。
指の腹でくるくると円を描くように。俺の官能を、くすぐるように。しなやかな指が、緩急をつけた動きで這い回る。そして尻の丸みが撫でられ、狂おしい動きで揉みしだかれていく。ああぁ、土岐ぃ……。
「ぁ……熱い……そこ、熱いよ? あっ、はぁっ」
恋人の指と手が与えてくる全ての感覚にいちいち震えてしまう俺は、陽射し以上の熱に浮かされて、身悶えながらもあっさりと体重を預けちゃうんだ。
「可愛いな。腰がいやらしく動いてるぞ。こんなにぴくぴくと小刻みに揺らして、どうした?」
「だって……ひゃっ」
色めいた声がカリッと耳殻を噛みながら、鼓膜をその声で濡らしてくる。
「淫らに揺らしながら、俺に熱を擦りつけてきてる。武田、どうしてほしい? 言ってみろ」
大好きな甘いテノールが、俺の耳朶を舐めながら低い艶声に変わっていくのをその腕の中で感じ、普段は衣服で隠れている場所を長い指が這う感触を受け入れてしまえば――。
「俺の指を、もっと感じてみるか? ここで」
蕩けるような誘惑の言葉に、馬鹿な俺は簡単に頷いてしまう。
さらに深く、刻み込むように感じさせてほしい、なんて願ってしまう。
「ぁ、土岐……土岐ぃ」
土岐が放ってきた誘惑の声に、早鐘を打ったかのように心臓がせわしく跳ね始めた。
下腹部の中心も熱を持ち、期待に震えるように、ひくんっと跳ねる。ふるふると揺れる。
そう、期待。土岐が俺を求めてくれるなら、そこに俺が拒否する理由なんて欠片も存在しない。
大好きで、大好きで。ずっと大好きで。人に誇れる物は、何にも持ってない俺だけど。その俺の全部を懸けられるくらい、お前が大好きだから。
「……っ、うんっ。触って、そこっ。俺、お前に触ってもらいた……っ」
――ピンポーン
「うおっ、なんだっ?」
――ピンポーン、ピンポーン
え? この馬鹿でかい音、何?
突如、ビーチに鳴り響いたインターフォンの呼び出し音に、蕩けた思考を引きずったままキョロキョロした。
「……チッ。時間切れか」
「え? 土岐? え? 時間?」
そしたら、土岐が珍しく舌打ちなんて聞かせてくるんだ。てゆうか、時間切れ?
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