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恋のバカンスは、予言通りにはいかない!?
秘密 #5
しおりを挟む「ふあぁ……あれ、すげぇ気持ち良かったぁ。もっと触ってほしか……うっ! ぶはっ! ゴホッ、ゴホッ! あっぶねぇ。がっつり寝てたあ!」
数時間前の土岐との記憶。濃厚な触れ合いを辿りながら、いつの間にかウトウトと浴槽の湯に沈んでいた。
「うぇっ。お湯、飲んじまったよー」
慌てて顔を上げ、口に入っていた湯を吐き出す。口を濯ぐ俺のうがい音が、浴室に虚しく反響していく。何やってんだ、俺。
「そういえば土岐、秋田の名前、出してた」
再び浴槽に身を沈めると、帰り際の冷たい視線が思い出された。
夕飯の前に茉莉がバラした秋田のお泊まりの件については、茉莉がどうしてもとだだをこねたから秋田も仕方なく泊まってくれたんだと説明したら意外とすんなりわかってくれたから、もうあの話は終わったものだと俺は思ってた。
「でも、もしかしたら、アイツの中ではまだ終わってなかったんかな?」
それで、あんな怖い顔してた? 茉莉には笑いかけてたけど、俺に向けられてたのは冷ややかな眼差しだけ。
てゆうかさ。もしも土岐が言いかけてた質問が、秋田が俺ん家に来た理由とかだったりしたら、俺、答えられなかった。困ってた。
だからあの時、茉莉が部屋に来てくれて助かったわけなんだよな。
絶対に言えないよ。土岐にだけは。
だって俺、土岐のことを秋田にこっそり相談してんだもん。
相談っつっても、俺ってば激しく照れちゃって、聞きたいことあんのに毎回ロクに聞けないんだけど。そういう時の秋田って、めちゃ頼りになって、俺が聞きやすいように先回りして話を振ってくれるんだ。
だから、そん時も土岐の誕生日プレゼントにどんなのを贈ればいいか、アイツにアドバイスしてもらってたんだよ。
で、『土岐くんには、これがイチオシ』って勧められた数学書を贈ったら、実際にすっげぇ喜んでもらえて、びっくりしたんだ。
数学書だぞ? めっちゃ喜ぶってマジか、土岐! つか、なんで、その本のことわかったんだ。マジか、秋田!
土岐は満面の笑みなんてホイホイ浮かべてくれるようなヤツじゃないけど。でも、心から喜んでくれてるってわかる笑みを俺に見せてくれた。
それだけで、すんげぇ嬉しかったのに、プラス、その後にめちゃ濃厚なキスタイムが追加されて、さらに幸せだった。
土岐の誕生日なのに俺が幸せっていう、ちょっとおかしなオプションつきだったのも、全部秋田のおかげなんだよ。
秋田は、すげぇ。アイツのアドバイスにハズレはないって確信できた瞬間だったぜ。
ずっと前、土岐とちょっとしたことで口喧嘩しちまって、なかなか仲直りできなくてヘコんでた時も、秋田のアドバイス通りにしたら、すぐに仲直りできたし。
それ以来、俺ん中で秋田は『恋の予言者様』なんだぁ。
てことで、予言者様への相談をこれからもコソッと続けたいから、このことは土岐には秘密。
絶対にバレないようにしなきゃ。秘密、秘密っ。
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