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キミの背中に、手を伸ばす。
#9
しおりを挟む「あ……」
耳殻に熱い感触を与えてきた土岐の唇は、すぐに離れていった。
けど、たった今、鼓膜を震わせてきた言葉は聞き間違いじゃないはず。
ふっ、ふふっ、『ふたりで』って言った。言ってた。『ふたりで一本』てことは、まさか口移しっ?
てなわけは、なくて!
ふたりで交代で飲むってことで! つまり、間接キスじゃん!
おおおぉ、マジか。俺相手に、アリなのか? マジなのかぁ?
や、この土岐が冗談なんて言うわけねぇから、マジなんだよ。そうなんだよ。イイんだよ!
でも一応、確認、する?
驚きでピッと固まった首筋をギシギシと音がしそうな動きで横にひねり、いまだ俺の肩に手を回してる相手の目を見るため、目線を動かす。
「……土、岐?」
どくどくと大きく跳ねる鼓動をそのままに、沈黙してる相手を見やる。すると、俺より5センチ低い相手の目線も俺を捕らえていた。真っ直ぐに。
「武田」
視線が合ったと思った瞬間、その目が緩んだ。
「驚いたか? 悪い、ほんの冗談だ。これは頑張ったお前へのねぎらいだから、お前が飲め」
肩に乗っていた土岐の手が俺の髪をくしゃっとかき混ぜ、そこでポンポンとした後、ペットボトルを拾い上げて手渡してくれた。
ほんの、冗談?
あー、そっか。俺、からかわれたのか。土岐も冗談とか言うんだ、ふーん。
てか、ちょっと舞い上がってたぶん、堪える。こういうのって、きっつ……。
「ミルクティーはお前が飲めばいい。その代わり、俺には別のものをくれよ」
「へっ?」
「今日、俺もけっこう頑張ったはずだけど?」
あっ、そっか。やっべ! 俺ってば、幽霊役で助けてもらってたのに、御礼してない。全然、気が利かないじゃん。
「幽霊役、めっちゃ助かったよ。おかげで女子たちに冷たい思いさせなくて済んだしさ。ほんと助かった! カフェオレでいいかな? すぐに買ってくるからっ」
土岐は白藤ちゃんのためだけにやってくれたんだってわかってるけど、御礼はきちんとしなきゃだ。
「待て」
なのに、ドリンクを買うべく踵を返した途端、腕を掴まれた。
「あ、カフェオレじゃ駄目? 何が飲みたいん?」
「はあぁ……マジでニブいな、お前。俺が頑張ったのは、お前のためなんだが?」
「え?」
おまえのため? オマエって……まさか、俺?
「頑張ったから、褒美、もらってもいいよな?」
「……っ! ととっ、土岐ぃっ?」
え? 何、これ。この体勢、何?
土岐の両腕がさ、俺の背中に回ってるんだよ。これって、抱きしめられてる図! じゃね?
土岐にっ!
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