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キミの視線に、乱される。
#2
しおりを挟むあっさりと俺に背を向けた土岐の姿勢の良い立ち姿が、昇降口から廊下に消えていった。
あーあ、せめて同じクラスだったらなぁ。
や、いつもの俺なら、脳天気にへらへら笑いながら土岐の教室まで一緒についてくとこなんだけどさ。
あんな夢見た後で心臓めちゃヤベーから、今朝は無理だわ。
てゆうか俺、なんで、よりにもよって、あそこまで濃厚でどエロな夢を見ちまったんだろ。
めっちゃリアルだったし。土岐の声とか、指の感触とか……。
んで、めっちゃ喘いでたし、俺!
あー、馬鹿じゃん。馬鹿じゃん、俺。現実との落差に、こんなにも胸が痛くなるっていうのにさ。
ほんとに、どうして土岐の夢を――。
「ねぇ、武田くん? やっぱり他にも具合悪いとこ、あるんじゃない? ちょっと顔色悪いよ?」
「……っ! あー、秋田。お前、まだ居たんか?」
土岐をじーっと見送っていた俺の視界に、ぴょこんっと飛び込んできた綺麗な鳶色の瞳に、びくっとのけぞった。
「やだなぁ。クラス一緒なんだから、居るでしょ、普通。というか武田くん、泣きそうな顔にも見えるよ? ほんとに大丈夫なの?」
「あ、あぁ、大丈夫。全然、大丈夫っ」
やべ。俺、フツーに土岐しか見てなかったから、秋田の存在、まるっと忘れてたわ。
秋田、変に思ってないかな?
まぁ、俺が土岐を大好きなのは、昔から全然隠してないんだけどさ。
でも、その『大好き』が幼なじみの友情じゃなくて、本気の恋愛感情だってバレたら、土岐に迷惑かかるじゃん?
てか、気持ち悪がられるじゃん?
土岐に。
だって俺、男なんだし。
そうなったら、もう友だちとしてすら、見てもらえない。
きっと、汚い物体でも見るような冷淡な目が向けられるに決まってる。
それだけは、嫌だ。
ただでさえ、ちっさい頃からうるさく纏わりついてはウザがられてるのに。
優しい時もあるけど、素っ気なくあしらわれる時のほうが、断然多いのに。
いくら脳天気な俺でもさ。いくら、いつもチャラチャラとお調子者キャラの俺でもさ。
好きなヤツに冷たい目で見られんのは……拒絶されんのは、すげぇ堪える。耐えらんない。
うっ、駄目だぁ。マジで、泣きそう。
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