3 / 87
キミの囁きに、震える。
#3
しおりを挟む快感に浸り、もっと続けてほしくて身をよじらせていた俺に、「そう言えば」と、低い呟きが落ちてきた。
「武田?」
次いで、冷ややかな声で俺の名が呼ばれる。
「なぁ? お前、さっきあの人と何を話してた? 俺の見てる前で堂々と顔を寄せ合ったり、内緒話してイチャついていたろう? お前、いい度胸だな」
「え? 『あの人』って、もしかして宮さまのこと? あれはそんなんじゃ……あっ、やあぁっ」
「動くな。口答えするな」
違う、イチャついてなんかないのに!
そう言いたいのに、さらに強まった土岐の指の刺激に、出せるのは喘ぎ声と荒い息づかいだけ。
土岐が言う『あの人』とは、2年のレギュラー、花宮煌先輩のことだろう。都の優秀選手に二年連続で選出されている、俺の憧れのバスケプレイヤーだ。
尊敬の念を込めて、俺はいつも『宮さま』と呼んでいる。だけど――。
「ここをいつも可愛がってやってるのは、誰だと思ってる?」
「んあっ! あぁっ……はんっ……」
「ほら、言ってみろ。こんなにコリコリになるまで弄って、お前をいつも善がらせてやってるのは、誰だ?」
「あぁっ、そこっ……やっ、ああぁっ!」
そんな風に同時にクリクリされたら、俺っ、もうっ……!
「ん? 返事はどうした。言えよ。あの人がこの耳に、どう触れたんだ?」
「違っ……触れて、ないっ。宮さまとはフォーメーションの話をしただけで……あぁ、耳っ、舐めないでぇ」
「駄目だ。触れてなくても、あんなに密着していたら吐息くらいはかかったろう? なら、消毒しないとな。それに、その『宮さま』っていうの、いい加減やめろ。俺よりもあの人のほうを特別視してるようで、ひどく気分が悪い」
「そんな、ことっ……あぁっ、んんっ」
『消毒』と言い、耳殻に沿うようにねっとりと舌を這わせてくる土岐が、嫉妬という熱を俺にハッキリと知らしめてくる。
あぁ、駄目だって、それ。
俺はただ、宮さまのプレイに憧れてるだけなんだよ?
なのに、耳が熱いから。
すごく熱くて、熱くて。それで、嬉しくて。お前の舌の感触が気持ち良すぎて。
俺、変になっちゃう。
『――武田』
耳元に与えられる官能に震えたその時、宮さまが俺を呼ぶ声が不意に聞こえたような気がした。
「あ、やだ……」
ここには、俺と土岐しか居ないはずなのに。
背中に、土岐じゃない別のひとの体温を感じている。ユニフォームが捲り上げられ、耳元には熱い吐息がかかる。耳朶をかすめていく舌の感触まで、まざまざと感じてしまう。
憧れ以外の特別な感情は何もなかったはずの宮さまなのに、あの人の甘い低音が聞こえる気がする。
土岐が、こんな風に熱く妬心を見せてくるから。だから、お前にされるように宮さまにも触れられてる錯覚にだって陥っちゃいそうなんだ。
「あぁ……土岐ぃ、俺っ……」
でも、どうしよう? これじゃ、俺……まるで、アレだよな?
乳首をお前に弄られながら、お前が耳に残した熱に、宮さまの幻を感じちゃうなんてさ。
ふたりに同時に責められてる妄想をしちゃうなんてさ。そんなの、まるで……まるで俺っ……。
「何だ? 目ぇ潤ませて、そんなに腰をひくつかせて。乳首だけじゃ足りないのか? ずいぶんな淫乱だな」
「……っ」
頭に浮かんでいた恥ずかしい言葉をそのまま言い当てられて、身体が更にひくひくと跳ねた。
イラスト:MARI(香咲まり)様
0
お気に入りに追加
161
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。


【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
==============
人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる