上 下
1 / 2
いつも、ずっと君だけを

しおりを挟む



「やぁっと来たか。おっせーな! 俺、めっちゃ腹へってんだぞ!」

「ちょ、顔見るなり何? それ、酷くない?」

「屋台で飯、食おうと思って夕飯抜いてるから腹ペコなんだよ。ほら、サクサク歩けよ、りょう

 涼、と名前を呼ばれた時には、もう手首を掴まれて引っ張られていた。

 何よ。そりゃちょっと待ち合わせに遅れたけどさ。

 でも今日の夏祭りの為に、すごく頑張ってオシャレしてきたのに!

 浴衣だって、お母さんに頼んで蝶柄の可愛いのを新調したし。この日のために去年から髪も伸ばして、綺麗めのアップにしてきたし。

 浴衣柄とお揃いの蝶の髪飾りも挿して、私的にはなかなかの出来になってるのに。

 どこにも、なぁんにも触れてくれないで、ひと言もなしとか、酷いよ。

 弟のあつしなんか、ウザいくらいベタベタ触って褒めてくれたってのに。

 一番見てほしいりゅうがこんな態度だと、めちゃめちゃヘコむ。

 はっ! もしかして私が浴衣着てるの、気づいてないとか?

 ま、まずいわ。毎日会いすぎて普段着と浴衣の区別もついてないとかだったら、どうしようっ?

 いえ、生まれた時からお隣さんで幼なじみのコイツなら、その心配も有り得るかも……。

「竜の、ばか」

「あ? 呼んだか?」

「呼んでない。ほら、お待ちかねの神社に着いたわよ。お腹いっぱい食べなさいよ!」

「うおっ!」

 神社の石段に向けて突き飛ばしてやったわ。ふん、ざまーみろ。




「よーし、こんだけ確保すれば、ひと安心だな」

「ひと安心て……あんた、買い込みすぎ。黙って見てれば、どんだけ買うの? お腹壊すわよ?」

 焼きそばに、たこ焼き。海鮮串焼き、フランクフルト、いか焼き、とうもろこし。多すぎでしょ。

 と、私のためのあんず飴。うん。これは嬉しい、けどね。

「平気、平気。全部、大好物だから。んじゃ、行くか」

「え、どこ……きゃっ!」

 片手に屋台の食べ物が入った袋を幾つも提げた竜が、空いた手で私の腰を攫った。

 神社前で突き飛ばしてから手すら繋いでなかったのに、いきなりの密着で焦りまくる。

 目前に迫った首筋からの汗の匂いに、一気に鼓動が跳ね上がった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

紅葉かつ散る

月並
青春
とある山の奥で鬼と暮らす少女は、その赤髪ゆえに、人から傷をつけられてしまう。 体の傷は癒えても心についたそれが消えない少女の前に、ひとりの男が現れる。

隣の席の関さんが許嫁だった件

桜井正宗
青春
 有馬 純(ありま じゅん)は退屈な毎日を送っていた。変わらない日々、彼女も出来なければ友達もいなかった。  高校二年に上がると隣の席が関 咲良(せき さくら)という女子になった。噂の美少女で有名だった。アイドルのような存在であり、男子の憧れ。  そんな女子と純は、許嫁だった……!?

イケメン少女と子犬王子

星名柚花
青春
覗きを働いた男子に鉄拳制裁したり、体調不良の女子をお姫様抱っこで保健室に連れて行ったり。 そんなことをしているうちに、湖城あやめは女子からモテまくるようになった。 どうやったら女子じゃなく男子にもてるようになるのか。 私だって青春したいのに!! 悩んでいるとき、あやめは不良に絡まれていた美少年を助けた。 美少女と見紛う美貌の彼は、あやめに興味を示し…?

青が溢れる

松浦どれみ
青春
〜そして初恋になる。教室に登校できなかった二人の成長の物語〜 関連作:長編「麗しのマリリン」こちらもよろしくお願いします! 【あらすじ】 春休み中の事故で高校入学が遅れ、クラスに馴染めずカウンセリングと自習室登校をすることになった青山美蘭(あおやま みらん)は、ある日同じクラスで持病のため保健室登校をしている青柳空(あおやぎ そら)と出会う。 初めはグイグイと距離を詰めてくる空に戸惑っていた美蘭も、毎日昼休みを一緒に過ごすことで次第に心を開いていった。 そして夏休み明け、持病の手術が成功した空に懇願され美蘭はついに教室へ登校する——。 教室内での新たな人間関係や、自分自身が解決できていない問題と向き合い、成長するふたりの青春ラブストーリー。 感想やお気に入り登録お待ちしております! よろしくお願いします^^

野球の王子様3 VS習志野・練習試合

ちんぽまんこのお年頃
青春
聖ミカエル青春学園野球部は習志野に遠征。昨年度の県内覇者との練習試合に臨むはずが、次々と予定外の展開に。相手方のマネージャーが嫌味な奴で・・・・愛菜と取っ組み合い?試合出来るの?

海辺の町で

高殿アカリ
青春
無口で読書好きのみなみには 陽太と夕花、二人の友人がいた。 三人の思いが交差して 夏は過ぎていく――――― 友情も 恋愛も 家族愛をも超えたその先に 見えるものは一体何だろう

【完結】遠くて近きは幼なじみ

カムナ リオ
青春
疎遠になっていた、二人の運命が交差するーー 仁科華は、待ちに待っていた0時から配信されるゲームをダウンロードしようとしていたが、突然の雷で家の電気が落ち、wifiが死に途方に暮れる。 二駅先のファミレスのwifiでゲームをダウンロードすべく、出かけようと思って窓の外を見たら、激しい雨が降ってきていた。 その時、昔仲が良かった近所の幼馴染の家の窓に、明かりが灯っている事に気がつく。華は、今はほぼ交流の無くなってしまったその幼馴染の家のwifiを借りれないか、一か八か連絡しようとするが……。 ※この作品は他、小説サイトにも掲載しています。

写真を撮るときに一歩下がる親友がウザいので『人の顔を自然にデカくするカメラアプリ』を開発してみた

どっぐす
青春
親友の菜々子は一緒に写真を撮るとき一歩下がる。 ただでさえデカいわたしの顔がさらにデカくなるんですけど? 責任取れや。

処理中です...