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俺の天使が世界に見つかる前に【6】
しおりを挟む「チカ?」
「なぁにぃ?」
「お前とする『ぎゅーっ』は、すげぇいいな」
「チカもだよ。チカも、いっしょ。いっちゃんの『ぎゅーっ』が、チカ、だいすきっ」
「だろ? なら、これから先、お前が『ぎゅーっ』をしていいのは俺だけだ。他の誰ともするんじゃねぇぞ」
「うん! だれともしない。いっちゃんだけ!」
「よし、いい返事だ。良い子だな」
それでいい。これでいい。気性も容姿も最上級の、可愛い可愛い俺のチカ。お前は、俺以外、見なくていいんだ。
チカを自分のテリトリーに囲い込むためになら、壱琉は何でもする。希少で貴重な愛すべき天使だけは決して手放さないと、彼は決めている。
「俺だけ、見てろ。よそ見は許さねぇぞ」
「はーいっ」
たぶん、こんな約束に意味は無いことを壱琉は知っている。チカの持つ魅力は、無限。これから先、数多の人間を惹きつけ続けるに違いないのだから。ただ——。
「俺が、好きか?」
「うんっ、もっちろん! だーいすき! ずっとずっと、大好きだよっ!」
たった一人、彼が溺愛する天使が全世界に見つかってしまう前に、このやり取りを繰り返していく。
互いだけが唯一の存在。壱琉にはチカ、チカには壱琉しかいないと幾度も繰り返すことで、チカの成長を待つ期間の心の拠り所とするのだ。
——頑張れ、俺。折れるな、壱琉! 生殺し我慢大会、あと十年っ!
-Fin-
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