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第四章
chapter【4−2】
しおりを挟む「ううっ……ふぇっ」
「ちょ、萌々ちゃん?」
「おい、萌々?」
慌てたような声と同時に、頭に手が乗った。
「来《こ》んといて! ブツブツ兄ちゃんは嫌いや! もう! 触らんといてって言ったやろ! アホ、アホっ!」
そのまま撫でられたから、めいっぱい頭を振った。絶対、泣き顔なんか見せるもんか。
俯いたまま、めちゃめちゃに両手を振り回して拒絶した。
アホアホアホーっ! あんたらなんか、大っきら……。
「なぁ、なんで泣いてんの? 大丈夫?」
この声!
「あ……」
恐る恐る、顔を上げれば。
「ん? 泣いてる理由、聞かせて?」
いつものたれ目をさらに下げた武田くんが、優しく微笑んでる。
頭を撫でてくれてたのは、武田くんの手だったんだ。いつの間に、私の目線と同じ高さの階段に腰かけてたんだろう。
「たっ、武田くぅん」
無理。大好きな君に言えるわけない。
「いや、武田。聞かせて、もなにも。低レベルなやり取りは丸聞こえだっただろうが。萌々があんなバカでかい声で叫んでたし」
はっ! そうだ。私、頭撫でられる直前まで、アホアホって言ってた。
「おい、煌。ここでそれを言う必要ないだろっ」
「あ? 事実じゃん。実際、萌々が喚き始めた時、もう部屋からアイツ出てきてたし。どうせ丸聞こえなのに、今更ごまかせるかよ」
「うっ、うわあぁぁああん! 煌兄ちゃんのばかぁ!」
――ガシャンッ、バキッ!
「あっ、花宮ちゃん!」
「萌々ちゃんっ?」
「萌々! おい!」
「ばか、ばか、ばかっ! 大っ嫌い!」
片づけ途中だったジグソーパズルのフレームをもう一度階段に叩きつけてトドメを刺し、その場から逃げ出した。
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