リナリアの夢

終章

リナリアの夢【１】

「なんだよ。俺たち、両想いだったのか。マジかぁ。じゃあ、謝らなくちゃ。俺がグズグズしてたから、つらい思いをたくさんさせました。ごめんなさい！」

「それは僕の問題ですよ。あなたに非は無い」

　同性で、六つも年下のあなたへの恋心だったから、こじらせざるを得なかった。

　自分の殻に閉じこもってウジウジしていたのは、こちらだ。

「いや、俺のせいです。特に、今日は大嘘ついたし。改めて、本当にすみませんでした！」

　これでは、堂々巡りだな。

　深く頭を下げたユージンの金髪がふわっと揺れる様子を前に、どうしたものかと思考を巡らせる。

　あ、僕、良いことを思いついたかも。

　一瞬で乃亜は結論を出した。にっこり笑って、ユージンに向かう。



「では、折衷案です。ユージンは僕への詫びとして、今後は僕と一緒に住むこと。どこに仕事で出かけようが、必ず僕のところに帰ってくると約束してほしい。これを了承してくれたら、全てを水に流します。どうです？」

「えっ、そんな、俺得しかない折衷案でいいの？」

「もちろん。ですが、もし、この提案に気兼ねがあるなら、あなたから僕への要求も受け付けますよ。何かありますか？」

「じゃ、じゃあ！　さっきから俺のことユージンって呼んでくれてんの、すっげぇ嬉しいけど。できたら『ジーン』って呼んでもらえる？　あ、違った。呼んでもらえますか？」

「いちいち敬語に直さなくていいのに。ふとした時に敬語が崩れるところ、その時、たいてい、子どもみたいに無邪気にはしゃいでいるところ、どっちもとても好きですよ。ジーン」

「う、わぁ」