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第三章

衝撃の告白【7】

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「じゃ、じゃあ、俺と付き合ってくれるってこと?」

「はい」

「やった!」

「あ、待って。それ、困ります」

「え? 抱きしめるの、だめ? 嫌? 付き合ってはくれるけど、俺のことはまだそんなに好きじゃない?」

 ふふっ。やっぱり鈍感くんだ。

 日頃から鍛えてるとわかる長い腕が乃亜の背に回ったのを、身をよじって躱すと、綺麗なブルーグレーの瞳が翳りを帯びた。

 違うんだよ。

「ごめんなさい。急に気分が……」

「えっ」

「ちょっとだけ、そっちを向いててほし……すみませ……うぅっ」

 乃亜がユージンの手から逃れたのは、唐突な嘔吐感のせい。

「え、なんで、また花吐いてんの? 俺と付き合うのに、なんで?」

 ごめんなさい。ごめんなさい。

 くるりと背を向け、喉の奥から溢れてきたものを吐き出しながら、ユージンに謝罪する。大好きな人が狼狽してると声で伝わってくるから、乃亜は身が縮こまる思いだ。

 ごめんね。僕も驚いてるんだ。どうして今? って。でも——。

「あ……ねぇ、ユージン。これ、見て」

「えっ! 今、ユージンって……うわっ、何だ、これ!」

 振り向いた乃亜が見せた物は、ユージンの目を限界まで大きく見開かせた。

「すげぇ。めっちゃキラキラしてる。これ、百合? 綺麗だ」

「白銀の百合、です。花吐き病の罹患者は、恋する相手に想いが通じて恋人同士になると、この白銀の百合を吐くんです。そして、それを最後に、病は完治となります」

「へっ?」

「わかりませんか? 僕の片想いの相手は、ユージン、あなたでした」

 万一の場合を考えて、相手に花が接触しないよう配慮しつつ、白銀の百合をユージンの目線まで捧げ持つ。

 花とはいえ、乃亜の体内から吐き出したものに『綺麗だ』と感想を言ってくれたことは、やはり嬉しく。恋の成就の証を、自分と一緒に見てもらいたかった。

「マジ? 俺を好きで、花を吐いてたの?」

「はい。敢えて正直に、ストレートに言いますが、たくさん吐きました」

 この先、一生、花吐き病と付き合っていく覚悟を決めていた乃亜だったから、まさか白銀の百合を手にする日が来るとは、という感慨が、容易に彼に告白をさせた。


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