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キミとふたり、ときはの恋。【第三話】

Summer Breeze【4−3】

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「涼香。今度は、少し膝を曲げてみてくれる?」
「え……わわっ!」
 きゃーっ! きゃーっ! きゃーっ!
 膝裏に回った奏人の手で左膝がくっと曲げられて、今度はふくらはぎの調査が始まったぁ!
 えーと……えーとね? この体勢ね?
 どう考えても、ミニスカの中が丸見えなんじゃあないかなっ? 奏人の位置的にっ!
 そりゃ、水着だけど! 下に履いてるのは、ビキニショーツだけど!
 この角度で見られてるの、めちゃめちゃ恥ずかしいぃ!
 駄目。もう無理。限界。助けて……。
「ここの筋を触っても痛くないなら、大丈夫そうだね。良かった、何ともなくて」
「う、うん。だいじょーぶ……あの、ありがと」
 ふくらはぎを入念にチェックした後、本当にホッとしたという表情を見せられて、きゅっと胸が締めつけられた。
 あぁ、私、また心配かけてたんだ。奏人に……。

 でもね! ほんとは全然大丈夫じゃなーい!
 たった数分の間に、メンタルめちゃめちゃ削られたのよ。心臓だって、全然ドキドキがおさまんない。
 そうだわ。奏人が大丈夫って判断したんだから、早くこの心臓に悪いシチュから逃げ出さないとっ。
「ねぇ、涼香? 君って、面白いね。ビキニ姿は堂々と見せつけてくるのに、こういうチラ見せは恥ずかしがるんだ。ふふっ、可愛いね。ねぇ、その顔、もっと近くで見ていい?」
「え? ちょっ……きゃっ!」
 ぎゃー! 『見ていい?』って聞く前に、もう顔がグイッと近づいてたんですけど?
 だから今、お尻の横について身体を支えてた両手の力が抜けて砂浜に背中をつけた状態で、迫ってきた奏人のお顔を見上げてるんだもん。

「上に羽織ってたワンピースを脱がせる時もすごく恥ずかしそうにモジモジしてたよね? 今もこんなに顔を赤らめてるし。ねぇ、どういうこと?」
 どういうことも、何も。だって、それは奏人が相手だか……。
「その顔、反則だよね」
「あっ」
 さらに顔を近づけてきた奏人の口から、低い声色に変わった言葉がこぼれ落ちてきて。同時に、温かい何かが太腿に触れてきた。
「こんなに綺麗な肌を惜しげもなく人目にさらしてるくせに。何、それ。――ほんと、堪んない」

 視界が、暗くなった。
 顔をさらに寄せてきた人の、程よい筋肉のついたその広い肩が真上から降り注ぐ陽射しを遮ったから。
 私の身体の上に、奏人の形の影がおりている。
「かなっ……」
 ちっ、近い、近い! 近づきすぎ!
 顔も身体も、超絶至近距離! 全部がバッチリと近い上に、太腿!
 太腿に乗ってた温かいモノは奏人の手で!
 そそそ、それが! たぶんミニスカの中に入ってきてます!
「えと、あの、奏人っ?」
「ん? 何?」
「こっ、ここビーチっ……」
「そうだね。でも大丈夫。プライベートビーチだって言ったろ?」
 ああぁ、違うんです。そんなに綺麗に微笑まれても、大丈夫じゃないです。
 いくらプライベートビーチでも、ここは外。誰かに見られないとも限らないし、おまけにこんな開放感ハンパないところでこんな体勢で密着するとか、心臓もたないわっ。

「ふふっ。こんな開放感ハンパないところで涼香とこんな風に密着できるなんて、テンション上がるな」
 うあぁ。価値観の相違、きたぁ。殺人的に綺麗な笑みも追加で、きたぁ。
「だからかな。我慢しきれない」
 綺麗な笑みの形のまま唇がおりてきて、何も見えなくなる。
「……っ……ふぁ……かな、とっ」
 ただ、影が濃くなった。





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