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キミとふたり、ときはの恋。【第三話】
Summer Breeze【4−2】
しおりを挟むえーと。今、なんて? 聞き間違いじゃなければ……ぬぬっ、脱がせていい? って聞こえたような気がするんですけどっ?
「かっ、かなっ……脱がっ、がががっ……」
「はい、もう脱ぐよ」
「えっ? あっ、ちょっ……えぇっ?」
私が両手をパタパタさせてアワアワしてる間に、奏人の長い指はワンピースの前ボタンをひとつ、ふたつと、順に外し始めちゃってるーっ。
「ままっ、待って? じっ、じぶっ……」
「ふふっ。水着を下に着てるって分かってるけど、なんか緊張するね。これ。それに、ドキドキするよ。ヤバいな」
違う、違う! 緊張するのは、私ー!
ドキドキしてヤバいのは、圧倒的に私ー!
そんな濡れた視線を投げかけられて、硬直しちゃって何も言えずに全身火照らせてる私のほうですーっ!
「涼香? 袖、抜いてくれる?」
なんて、脳内だけで激しく絶叫してる間にボタンはサクサクと外され、ワンピースは肩から滑り落とされて袖を抜くだけの状態になっていた。
「う、うん」
もう、どうしようもない。上着を脱がせてくれただけの話よ、これは。諦めよう。
言われた通り、左右の肘を曲げて袖を抜き、ワンピースを脱いだ。
「ん、綺麗だよ。よく似合ってるし、可愛いね。この水着」
「あ……ありが、と」
目を細めて褒めてくれた奏人の笑みは、なんだか直視できなくて。俯いて、小さく御礼を言った。
高階くんたちの前でも褒めてくれたけど、その時は『水着、新調したの? 可愛いね』って言われただけで。『綺麗』って言われたのは、今が初めてだったから。
恥ずかしいけど……嬉しい。
奏人に海に誘われてから、すぐに水着を買いに行った。
選んだのは、花柄の透け感が涼しげなフレアレースの白いキャミソールと、紺色地に白のマーガレット柄があしらわれた二段フリルのミニスカートのセット。
ちなみに、さっきまで着てたワンピは、このスカートの柄に合わせて後から買った物だ。
で、キャミとスカートを脱げば、それぞれ同じ色柄のバンドゥビキニになる。
基本、スカートは脱がないつもりだけど、下に履いてるビキニショーツの両サイドがリボンの紐タイプになってるとこがセクシー可愛くて、実はお気に入りなんだぁ。
チューブトップブラが肩のラインが綺麗に出るからって、おばあちゃんに勧められて買ったバンドゥスタイル。
けど、さすがに日本のビーチでは浮くと思って、キャミとスカートを合わせてふんわりフェミニンを目指したのよねぇ。
あ、でも、プライベートビーチなら、上下とも脱いでもいいのかしら? 奏人も『遠慮なく』って言ってくれてたし。
そういえば、去年、初めて奏人と遊園地のプールに行った時、オフショルダーのニットレースビキニを着たら、ものすごい早さでバスタオルを掛けられたっけ。
あれは、びっくりしたわぁ。サーモンピンクのニットレース、肌触りが良くてすごく気に入って……。
「涼香、浮き輪の準備できたよ。行こう」
「あ、はぁい…………あっ! きゃあっ!」
「涼香っ?」
「……いったぁぁ」
足、ひねったぁ。
「大丈夫? 足、ひねった?」
「あ、うん。ちょっとグギッてなっ……」
「見せて」
「えっ? きゃあっ!」
奏人が咄嗟に支えてくれて助かったけど、足をひねったことを伝えたら、いきなり両足が浮いた。つまり奏人に抱き上げられて、次に砂浜にそっとおろされたわけなんだけど。
「ここ、触っても痛くない? ここまで曲げられる?」
私の足元に膝をついた奏人が、足首を念入りに調べ始めちゃった。
ひねった瞬間は痛かったけど、今はどこも何ともない。
他に誰もいないとはいえ、恥ずかしいから早く終わってほしいんだけど、前に捻挫したことがある左足だから奏人が納得するまでは離してくれない気がするわ。たぶん。
うぅ、こうなるってわかってたら厚底ヒールのビーチサンダルなんか選ばなかったのに……私のばかっ。
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