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キミとふたり、ときはの恋。【第三話】
Summer Breeze【3−10】
しおりを挟むんー、風が気持ちいいーっ。
午後を過ぎて頂点に達した太陽から注がれる陽射しは痛いほどに熱を届けてくるけれど、吹く潮風はそれとは真逆の爽やかさを運んでくれてる。
奏人が漕ぐ自転車の後ろに乗って数分。さっきまでいた海岸よりも砂浜は小さいけど、大小さまざまな形の岩が見える綺麗な景色の浜辺で、奏人が自転車を止めた。
景色を眺めるのかな? あら? あれは——。
「ねぇ、奏人。あの岩の形、面白ーい。亀さんみたいっ」
「亀……涼香。あの岩ね、『漁師の祈り岩』って名前なんだよ。海が荒れないように祈ってる姿なんだって」
「え? あ、あら、漁師さんだったの? どう見てもガッツポーズ亀さんにしか見えなかった」
「ふはっ! あ、ごめん。でも、亀がガッツポーズ……ガッツポーズ亀……ふっ、くくくっ」
「え、なんでそんなに笑ってるの?」
そういえば、岩の名前を教えてくれた時から繋いでる手が小刻みに震えてたけど、もしかしてずっと笑ってたの?
「ふふっ。ごめんね。涼香のネーミングセンスが可愛らしすぎるせいだから気にしないで。それより、このまま少し歩こう。目的地は、すぐそこなんだ」
見上げた奏人は、ただ穏やかな笑みを見せるだけで答えはくれなかった。
けれど、心なしか機嫌良さそうに、自転車を片手で押しながら私の手も引いて歩き出したから、奏人が楽しいならいいかと思って、それ以上聞くのはやめた。
ネーミングセンスってワードは微妙に気になったけど、綺麗な景色を奏人と眺めながら歩くのはとても嬉しいことだったから。
「こっちだよ。そのまま入って」
「え? わぁ、綺麗な砂浜ー!」
そうして、また数分歩いた先で、いったん私の手を離した奏人が自転車を止めた場所。そこも、とても綺麗な砂浜だった。
「ここで泳ごう。ここなら誰にも邪魔されないから」
え、誰にもって……あら? あらら?
ほんとだ。この海岸、誰もいないわ。さっきのガッツポーズ亀さんの海岸には人影があったのに。
なんで? どうして?
「おいで。涼香。今からは、二人だけの時間だよ」
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