キミとふたり、ときはの恋。【Summer Breeze】

冴月希衣@商業BL販売中

文字の大きさ
上 下
32 / 48
キミとふたり、ときはの恋。【第三話】

Summer Breeze【3−7】

しおりを挟む



 インハイの予選が終わった後、山吹さんに告白してきた後輩くんがいて。山吹さんいわく、『チカ並みに可愛い、子リスみたいな子』にものすっごく熱ーく迫られてるところに息を切らせて駆けつけた司波くんが、その後輩くんに『ある言葉』を言い放ってその場から山吹さんを連れ去ったらしい。
 そのセリフをそのまま言うのはすごく恥ずかしいからって、内容までは教えてもらえなかったんだけど。
 実はふたりは十年前にこの神奈川の海で出会ってて、司波くんはその時に交わした約束を果たすために山吹さんと同じ学校に入学したという話だった。
 小六まで奏人たちと祥徳学園に通ってた司波くんが中学受験してまで耀光学院に行ったのは、単純にバスケ部が強いところを求めてだとばかり思ってたんだけど、実は山吹さんのためだったとか!
 何、それ! すごくいいっ!

 おつき合いを始めるきっかけになったそのセリフも本当は聞かせてもらいたかったけど、私だって、あのスキー場で奏人に言われた言葉を誰かに話すことはしてないもん。
 チカちゃんにも美也ちゃんにも話してない。恥ずかしいのもあるけど、あの告白は、奏人が私にだけ伝えてくれたものだから、大事にしたいの。
 普段、寡黙な人が迸るようにぶつけてくれた想いの丈、だったから。
 そういえば、あの時まで奏人があんなに情熱的だなんて知らなかっ……。
「おい、山吹。俺が着せたパーカー脱いでんじゃねーよ。この馬鹿」
「馬鹿とは、なんだ。そういうお前こそが馬鹿だろう」
 あ、あれ?
「は? 俺が馬鹿なわけねぇだろ。つか、マジでパーカー着ろよ。ったく、そんな目立つビキニ着やがって」
「あ? 目立つならいいじゃないか。店の宣伝を兼ねてるんだから」
「はあぁ? いいわけねぇだろが!」
「あ、あのぅ……ちょっといい? 私、山吹さんのビキニ姿、とっても綺麗だと思うんだけど。司波くんは、どうしてそんなに怒ってるの?」
 突然始まった言い争いがなかなか終わりそうになかったから、思い切って割り込んでみた。言いたいこともあったし。
 山吹さんが身につけてるビキニ。目にも鮮やかなオレンジ色の大人っぽいデザインのそれは、すらりとしたモデル体型の彼女にとても良く似合ってる。どうして司波くんは、それを隠せなんて言うのかしら。
「私のおばあちゃんが言ってたわよ。『ビーチの正装は、ビキニ』だって。それにお店の宣伝も兼ねてるなら、司波くんはそれを邪魔するようなこと言っちゃ駄目なんじゃない? だって、山吹さんは『オレンジの太陽』そのものでしょ?」

「涼香ちゃん、君……くそっ、土岐め。アイツがこんな凶器を放置してるから……」
「白藤さん、よく言ってくれた。ありがとう」
 私を見ながら何とも言えないお顔を見せた司波くんが気になったけど、山吹さんがとても嬉しそうに笑ってくれたから、カレカノの会話に図々しく割り込んだこと許してもらえてるのかな?
 頭上のビーチパラソル。山吹さんが着用してるビキニと同じ色のパラソル越しに見える看板を見上げて、「御礼なんて、とんでもない。それにしても素敵な店名よねぇ」と、私も同じ笑みを返した。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話

水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。 そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。 凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。 「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」 「気にしない気にしない」 「いや、気にするに決まってるだろ」 ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様) 表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。 小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。 遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。 本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。 優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。

うわべに潜む零影

クスノキ茶
青春
資産家の御曹司でもある星見恭也は毎日が虚ろに感じていた とある日、転校生朝倉陽菜と出会う。そして、そこから彼の運命は予測不可能な潮流の渦に 巻き込まれていく事に成る。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

放課後はネットで待ち合わせ

星名柚花
青春
【カクヨム×魔法のiらんどコンテスト特別賞受賞作】 高校入学を控えた前日、山科萌はいつものメンバーとオンラインゲームで遊んでいた。 何気なく「明日入学式だ」と言ったことから、ゲーム友達「ルビー」も同じ高校に通うことが判明。 翌日、萌はルビーと出会う。 女性アバターを使っていたルビーの正体は、ゲーム好きな美少年だった。 彼から女子避けのために「彼女のふりをしてほしい」と頼まれた萌。 初めはただのフリだったけれど、だんだん彼のことが気になるようになり…?

処理中です...