28 / 48
キミとふたり、ときはの恋。【第三話】
Summer Breeze【3−3】
しおりを挟むえーと、どうしたら……あ、まずは、あれよね。ここは皆のビーチだから大事になる前に止めなくちゃ、よね?
あぁ、でも、こうやって見ると、奏人ってば、ほんとに足長いわよねぇ……はっ、違う! 感心してる場合じゃなくて! とっ、止めなくちゃ、なのよ!
「かっ、かなっ……」
「はーい。そこまで、そこまでー! 金髪くんたちは、こっち来てくれるー?」
え?
「土岐、そろそろ離してやれ。ソイツの手、色が変わってきてるぞ」
「チッ。お前ら、止めに来るのが早いぞ」
え? え?
「白藤さん、大丈夫? 怖かったろ? 主に土岐が、だけど」
「えっ……あっ、高階くん! ねぇねぇ! どうして皆がいるの? 高階くんに、一色くん。それに司波くんまで!」
びっくりした。すごくすごく、びっくりした。
だって、奏人に声をかけながら一歩踏み出した私をサッと追い抜いて、奏人を止めたのが司波くんと一色くんで。私の横に並んで、気遣うように声をかけてくれたのが高階くんだったんだもん。
三人とも奏人の幼なじみだけど、同じ学校の一色くん、高階くんだけじゃなくて、他校の司波くんまでが急に現れて、ほんとにものすごく驚いたのよ。
「あれ? 土岐から聞いてないの? 俺と基矢は昨日からここに遊びに来てて、司波はこのビーチでバイトしてるんだよ。白藤さんも荷物預けたでしょ? この海の家が司波のバイト先だよ」
「えぇっ? 知らなかった! 私、何にも聞いてないよ?」
え、何、それ。初耳なんだけど。奏人、何にも言ってくれてなかっ……。
「涼香、お待たせ」
「ぎゃっ! かかかかっ、奏人っ?」
「ふはっ! ひと言め、ひどいな。俺、彼氏だよね?」
「だ、だってっ……これっ! あの、離れ……離れてっ?」
「駄ぁ目。というか、無理」
違う、違う! 『無理』は、私のセリフぅぅー!
だって、高階くんとお話ししてたら、いきなり正面からすっぽりと奏人に抱きすくめられて! 高階くんのお顔は見えなくなるし、素肌同士の密着具合がすごすぎて!
「私が無理! 苦しくて、無理ぃぃ!」
「ふふっ。土岐さぁ、気持ちはわかるけど、一応、ここは公共の場だからさ。やめたげなよ、白藤さんのためにも」
高階くん、ナイスフォロー! そうよ、もっと奏人に言ったげ……。
「まぁ、隠したい気持ちもわかるけど。白藤さん、着痩せするタイプだったんだね。全然気づかなかったよ」
えっ?
「ていうか土岐。そうやって隠すくらいなら、ラッシュガードか何か着てもらえばいいじゃん。なんで、こんなに目の毒なの、放置してんの?」
「何回も言った。去年もな。けど、彼女には通じないんだ。『水着姿は隠すものじゃない』という刷り込みがあるらしい。だから、これが最善策だ」
んん? 途中から奏人と話し始めちゃった高階くんの言葉の意味が、ちょっとわかんない。
けど、奏人が少しだけ腕を緩めてくれたから、顔を上げて言った。
「え? だって、おばあちゃんが言ってたもん。ビーチの正装はビキニだって。だから離してくれて大丈夫よ? 日焼け対策は万全だしっ」
「あははっ! そうか。土岐が心配してるのは、日焼けだと思われてるんだ」
「うるさい。笑うな」
え? あれ? なんで、このタイミングで高階くんが吹き出したの?
10
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
花霞にたゆたう君に
冴月希衣@商業BL販売中
青春
【自己評価がとことん低い無表情眼鏡男子の初恋物語】
◆春まだき朝、ひとめ惚れした少女、白藤涼香を一途に想い続ける土岐奏人。もどかしくも熱い恋心の軌跡をお届けします。◆
風に舞う一片の花びら。魅せられて、追い求めて、焦げるほどに渇望する。
願うは、ただひとつ。君をこの手に閉じこめたい。
表紙絵:香咲まりさん
◆本文、画像の無断転載禁止◆
No reproduction or republication without written permission
【続編公開しました!『キミとふたり、ときはの恋。』高校生編です】
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
キミの生まれ変わり
りょう改
青春
「私たちは2回生まれる」
人間は思春期を迎え、その後に生まれ変わりを経験するようになった遠い未来。生まれ変わりを経験した少年少女は全くの別人として生きていくようになる。
余命三ヶ月、君に一生分の恋をした
望月くらげ
青春
感情を失う病気、心失病にかかった蒼志は残り三ヶ月とも言われる余命をただ過ぎ去るままに生きていた。
定期検診で病院に行った際、祖母の見舞いに来ていたのだというクラスメイトの杏珠に出会う。
杏珠の祖母もまた病気で余命三ヶ月と診断されていた。
「どちらが先に死ぬかな」
そう口にした蒼志に杏珠は「生きたいと思っている祖母と諦めているあなたを同列に語らないでと怒ると蒼志に言った。
「三ヶ月かけて生きたいと思わせてあげる」と。
けれど、杏珠には蒼志の知らない秘密があって――。
恋の泉の温もりよ
楠富 つかさ
青春
主人公、花菱心は地元を離れてとある温泉街の高校を受験することに。受験の下見がてら温泉旅館に泊まった心はそこで同い年であり同じ高校を受験するという鶴城ゆもりに出会う。
新たな出会いに恵まれた時、熱く湧き上がるのは温泉だけではなくて――
温泉街ガールズラブストーリー、開幕です!
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
港西高校山岳部物語
小里 雪
青春
登山未経験ですが、どうしても北アルプスの剱岳に登りたい主人公が、高校で山岳部に入ります。しかし、その山岳部には上級生と同級生が一人ずつ、主人公をあわせても、三人しか部員がいません。しかも、どうやらその部に入るだけで変わり者扱いされてしまうようです。
高校の山岳部やワンダーフォーゲル部は、インターハイや国体などの、いわゆる「競技登山」をメインに行っているところが多いのですが、港西高校の山岳部は、そういう競技登山ではなく、純粋に山を楽しみ、山に行く技術と体力を身に着けることを目標としている部です。
厳しいトレーニング、ゆったりと部室で流れる時間、山の美しさと険しさ、そして、恋心。上級生や同級生、先生、家族との関わりの中で、主人公が成長していく物語です。
登山に興味がある人にとってはもちろんですが、そうでない人が読んでも分かるように書いたつもりです。
この作品は「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる