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キミとふたり、ときはの恋。【第三話】
Summer Breeze【2−10】
しおりを挟む「まぁ、そうは言っても、なかなかそんな風にできないでしょ? だから、俺も『お願い』のお返しをしようと思うんだ。ねぇ、涼香。俺の『お願い』も聞いてくれる?」
あぁ、これ。私が気を使わないで済むように提案してくれてるんだ。奏人らしい気遣いが、嬉しい。
「うんっ」
いいよ? 何でも言って?
「ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えて言うね。——明日は、一日中、俺から離れないで。これが、俺のお願いだよ。いい?」
「え? あの……そんなのでいいの? 奏人、それこそ私得よ?」
明日は、ひさしぶりのデート。ボストンから帰ってきたら、海に行こうって奏人が言ってくれた約束が果たされる日。
帰国の翌日。つまり今日から明後日までの三日間は部活がお休みだから、明日行くことにしたの。
奏人とふたりきりのお出かけで、『ずっと離れないでいい』だなんて、私へのご褒美でしかないわ。いいのかしら?
「ふふっ。じゃあ俺たち、互いの『お願い事』がそれぞれ自分得になるから、それでちょうどいいんじゃない? 貸し借りなしだ」
「奏人……うん……うん、ありがと」
全然、『ちょうどいい』なんて思えない。どう考えても、私にとって得になることばかり。
でも、私のためにこう言ってくれてる奏人には、ただ「ありがとう」とだけ伝えるべきだ。
「ありがとう、奏人」
「あれ? そんなに御礼言われると心が痛むな。一応、手本を見せておくと、『離れないで』っていうのは、こうしておいてってことだよ?」
「えっ? きゃっ……もおぉ、奏人っ!?」
奏人が見せてくれたお手本。突然のそれに、びっくりして声があがった。
「あのっ、おろしてっ?」
だって、腰を抱えられて、奏人のお膝に乗せられてる状態!
「ん? 駄目? 涼香は俺のお姫様だから、大事に連れて歩きたいだけなんだけどな」
「おひっ? おひひっ……えぇっ?」
お、お姫様って! 奏人ったら、なんてタイミングで、なんてこと言うの?
「駄目じゃないよね。もう俺の中で、これは決定事項だから。――明日が楽しみだね、涼香」
うあぁ……そして、なんて綺麗に微笑むんだろう。
いつも、いつも、何度も同じことを思うけれど。
「うぅ……と、時と場合によりけりだけど……ぜ、善処しますぅ」
奏人のこの笑みには、勝てない。その望みを叶えてあげたいと思ってしまう。だって――。
「善処してくれるの? ありがとう。でも、『時と場合』なんて、明日の俺たちには一切ないけどね」
いじわるなことを言う時に一番綺麗に笑う、ずるい人。
この笑みを私に向けてくれるこの人が、本当に大好きだから――。
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