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キミとふたり、ときはの恋。【第三話】

Summer Breeze【2−7】

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「んっ」
 頬ずりの延長で、頬に触れてきた奏人の唇。
 綺麗な形のそれは、左右の頬に数回キスを落とした後。再度、「どう? こんなこと、したりしない?」と、私への質問の言葉を形作った。ひっそりとした声で。
 感情を見せない黒瞳が、真正面で私の返事を待っている。
「しない。こんなことするのは、奏人とだけ」
 きっと、これが正解だ。奏人に返す言葉も。それから、私が取る行動も。
 ものすごく恥ずかしいけど。普段なら、こんなこと、たぶんめったにしないけど。
 恥ずかしすぎて顔は熱いし、心臓の音もめちゃめちゃうるさいけどもっ。
 震える指を、奏人に向けて伸ばした。
 チョコレート色のアンダーリム。奏人の眼鏡のフレームに指をかけ、すーっと手前に引く。
 黙って私を見返す奏人の黒瞳を見つめながら、そうっとそれを引き抜き、瞳を閉じた。

「奏人?」
 瞳を閉じ、名を呼び、じっと待てば。肩に乗っていた奏人の手が、頬に添えられた。
「ん、知ってる。俺だけだよね。知ってたけど、――でも、ありがとう」
 眼鏡を外す行為、イコール、私から深いキスをねだる行為。それに対する奏人の返事は、吐息とともに降ってきた。
「……っ、奏人」
「涼香?」
 互いの名を呼び合う吐息が、熱い。
 羽根のように、ふわりと啄まれたり。上下の唇をしっとりと食まれたり。そっと角度を変えて、唇をかすめていく奏人の熱。それを、ただ受けとめる。
「は……ぁ、かな、と」
 吐息とともに受け入れた感触は、とても優しいけれど少し性急で。そのギャップに奏人の想いが感じられて、胸の奥がじんと痺れた。

「会いたかった」
「うん! うん、私もっ……私も同じっ」
 ひどく愛おしげな囁きに、泣きそうになりながら言葉を返す。
 会いたかった。私も。
 もう一度奏人に会えるまでは絶対に口にしないと決めていた言葉。私の本心。
 でも、今なら声に乗せてもいいかな? もう、いいよね?
「さっ、寂しかったよ? すごく……すごくっ」
「涼香っ」
 再び重なった唇は、灼熱。次第に強く押しつけられて、互いの吐息が密に触れ合い、熱く蕩けながら絡まり合っていく。
「俺も、同じ気持ちだったよ。ずっと」
 力強い腕に、軋むほどに強く抱きすくめられながら。


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