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キミとふたり、ときはの恋。【第三話】
Summer Breeze【2−5】
しおりを挟む三日後。
――ピンポーン
「いらっしゃい。待ってたよ」
「あ……お、おはよぉっ」
やだ。声が上擦っちゃった。
だって、だって、だって! 二週間ぶりの奏人!
昨日、帰国したての奏人が、目の前にいて! 私に微笑んでてっ。
「ひっ、日焼けしてるーっ!」
ドアを開けてくれた瞬間、わかった。
Tシャツの半袖から伸びてる腕も、Vネックのラインが縁取ってる首筋も、どこも浅黒く日焼けしてて、野性的で。
すごくすごく、かっこいいの!
「あ、やっぱり焼けたってわかる? 遠征先のアカデミーは屋外にも練習コートがあって、そこで焼けたんだよ。――さ、入って。外、暑かっただろ?」
それで、野性的になったぶん、どこか艶めかしさも増した気がするわ。
おまけに、その見た目が繰り出してきた笑顔の威力が、これまた! 凄すぎます!
ひさしぶりに会う私には、眩しい。眩しすぎる。目の毒って、こういうことを言うのねっ。
「おお、お邪魔しまっ……きゃっ」
「ねぇ、涼香。俺、挨拶の後は『会いたかった』って言ってくれるのかと思ってたんだけど。まさかの日焼け発言に、正直、ヤラレたよ」
招き入れられた玄関で靴を脱ごうと俯いた途端、背後から伸びてきた奏人の腕の中に囲われてしまった。
「かか、かなっ……あの、ここ玄関……お、お家の人っ」
私は、その日焼けしたあなたの姿に、とっくにヤラレてます。この体勢にもね!
だから、私の鎖骨の上でクロスされた腕を掴んで、大事なこと(ここ、玄関!)を思い出してもらおうとしたんだけど。
「んー? 大丈夫。今、家にいるの、俺と涼香だけ」
「ひゃっ……ぁっ」
サイドで緩く三つ編みにして露わになった首筋に落ちてきた、奏人の感触。
唇と吐息。その両方の熱さに、何も言えなくなった。
「これ、ずっと身につけてくれてるんだね。嬉しいよ」
うなじにおりた唇が、チュッチュッと軽く肌を吸い上げては首筋を辿っていく。奏人がくれたネックレスの鎖の、さらにその下まで。
「あ……かな、とっ」
その感覚に、ふるりと身を震わせ、背後から包み込んでくれる奏人に身体を預ける。
「もう消えてるだろうから、つけ直しとくよ。いいでしょ?」
「あ、っ」
あの七夕の夜以来。顔を合わせる度に、必ず私の身体のどこかにつけられるようになっていた、奏人の印。
それは、この二週間のうちに、ひとつの痕跡も見つけられなくなっていた。
「んー、ここがいいかな」
ブラウスのフリル襟を少し引き下げ、ある一点で止まった奏人の唇が、そこをちゅうっときつく吸い上げた。明確な意志を持って。
「んっ」
肌に伝わる、少しの痛み。それを、胸元で私を支える奏人の腕に捕まり、目を閉じて受け入れる。
だって、寂しかった。
日が経つにつれ、だんだんと薄まっていく痕を確認する度。その度に、奏人の不在を思い知らされて。
だから、奏人の独占欲の証が、もう一度、私に刻みつけられるこの瞬間をずっと待ってた。
「――ん、これでよし。さ、おいで。お土産、あるんだ」
うなじをそろりと撫で、私に向けてその手を差し出した奏人が向けてくれてる、この甘やかな笑み。
「うん」
これに微笑み返すことができるこの瞬間も、私、ずっと待っていたの。
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