19 / 48
キミとふたり、ときはの恋。【第三話】
Summer Breeze【2−4】
しおりを挟む「――あ、あの、ただいま。その……ごめんね。急に持ち場を離れたりして」
「大丈夫よ。ちゃんと、どこに行くか教えていってくれたでしょ? それに、お話相手の姿もここから見えてたし。まぁ、急にスコップを手渡された時はびっくりしたけどねぇ」
頭を深く下げて謝ってから顔を上げれば、おばあちゃんが笑って頷いてくれてた。
うぅ、でも炎天下での作業を増やしてしまって、ほんとごめんなさい。
「あのね、『千葉の恩人さん』だったの。ここに入院なさってたなんて知らなくて、びっくりしちゃった」
「そう、こちらの病院だったのね……じゃあ、また顔を見せにお伺いすればいいわ。ね?」
〝恩人さんのひとり〟が都内の病院に入院なさった話は、おばあちゃんには既にしてあった。だからか、多くは聞き返さず、『また来ればいい』とだけ返してくれた。
「うん、そうね……そうする。『またお伺いします』って、約束もしたし。私、また来るわ。ここに」
恩人さんたちのこと、ちゃんと奏人にお話ししてから。
おばあ様と偶然の再会を果たせた、ちょうどその夜。奏人からメッセージが届いた。
二日後、予定通り帰国すること。それから、私が『会いたいから時間を取って』とお願いしてた日にちも、その次の日で変更がないこと。
「三日後、か……あと二回寝たら、奏人に会える」
その夜は、なかなか寝つけなかった。おばあ様と煌先輩のお顔が浮かんできて。そして、奏人にまた会える嬉しさとで。
でも、会えるまでには、まだあと丸々二日もかかってしまう寂しさとで、神経が高ぶっていたから。
「奏人……」
胸元に、無意識に手が動く。奏人がくれたネックレスへと。ふたつの星を指でそうっと撫で、目を閉じた。
『ねぇ、涼香? ここにね、俺がいるよ。だから、俺が戻ってくるまで待ってて』
ネックレスをくれた時の言葉。大好きなひとの声を、脳内で再生しながら――。
10
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
花待つ、春のうた
冴月希衣@商業BL販売中
青春
「堅物で融通が利かなくて、他人の面倒事まで背負い込む迂闊なアホで、そのくせコミュニケーション能力が絶望的に欠けてる馬鹿女」
「何それ。そこまで言わなくてもいいじゃない。いつもいつも酷いわね」
「だから心配なんだよ」
自己評価の低い不器用女子と、彼女を全否定していた年下男子。
都築鮎佳と宇佐美柊。花待つ春のストーリー。
『どうして、その子なの?』のその後のお話。
◆本文、画像の無断転載禁止◆
No reproduction or republication without written permission.
夏の出来事
ケンナンバワン
青春
幼馴染の三人が夏休みに美由のおばあさんの家に行き観光をする。花火を見た帰りにバケトンと呼ばれるトンネルを通る。その時車内灯が点滅して美由が驚く。その時は何事もなく過ぎるが夏休みが終わり二学期が始まっても美由が来ない。美由は自宅に帰ってから金縛りにあうようになっていた。その原因と名をす方法を探して三人は奔走する。
クルーエル・ワールドの軌跡
木風 麦
青春
とある女子生徒と出会ったことによって、偶然か必然か、開かなかった記憶の扉が、身近な人物たちによって開けられていく。
人間の情が絡み合う、複雑で悲しい因縁を紐解いていく。記憶を閉じ込めた者と、記憶を糧に生きた者が織り成す物語。
すべては神様のてのひらのうち
ゆうひゆかり
青春
私・花房みくるの家にある日不思議な男の子がペットの柴犬を伴って居候としてやってきた。
名前は八雲いづみ君。
彼の手は冷たくて、笑顔はなんだか嘘くさくて、なのに五歳で死んだ双子のお兄ちゃんの面影があたたかくて。
そんな不思議男子・八雲いづみ君がやってきてからというもの、私のまわりには恋の予感が⁈
友達がカップルになっていくなか、私も八雲君に惹かれていってーー。
となりの芝生って何色ですか⁈
余命三ヶ月、君に一生分の恋をした
望月くらげ
青春
感情を失う病気、心失病にかかった蒼志は残り三ヶ月とも言われる余命をただ過ぎ去るままに生きていた。
定期検診で病院に行った際、祖母の見舞いに来ていたのだというクラスメイトの杏珠に出会う。
杏珠の祖母もまた病気で余命三ヶ月と診断されていた。
「どちらが先に死ぬかな」
そう口にした蒼志に杏珠は「生きたいと思っている祖母と諦めているあなたを同列に語らないでと怒ると蒼志に言った。
「三ヶ月かけて生きたいと思わせてあげる」と。
けれど、杏珠には蒼志の知らない秘密があって――。
冬の水葬
束原ミヤコ
青春
夕霧七瀬(ユウギリナナセ)は、一つ年上の幼なじみ、凪蓮水(ナギハスミ)が好き。
凪が高校生になってから疎遠になってしまっていたけれど、ずっと好きだった。
高校一年生になった夕霧は、凪と同じ高校に通えることを楽しみにしていた。
美術部の凪を追いかけて美術部に入り、気安い幼なじみの間柄に戻ることができたと思っていた――
けれど、そのときにはすでに、凪の心には消えない傷ができてしまっていた。
ある女性に捕らわれた凪と、それを追いかける夕霧の、繰り返す冬の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる