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キミとふたり、ときはの恋。【第三話】

Summer Breeze【1−12】

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「こんにちはーっ。涼香ちゃんを連れて来たよー」
「あ、いらっしゃい」
 ドアを開けて先に中に入ったチカちゃんの肩越しに、立ち上がった人が見えた。
「こっ、こんにちは。お邪魔しますっ」
「白藤さん、来てくれてありがとう。待ってたのよ」
 慌てて頭を下げた私の前に歩いてきた人は、生徒会副会長の藤沢香子ふじさわこうこさん。先月、奏人のバイト先のランチに一緒に行った美也ちゃんの幼なじみ、藤沢慶太くんのお姉さんだ。
 うわぁ、やっぱり美人さんだわぁ。慶太くんも綺麗なお顔立ちしてるけど、お姉さんは色気が追加されてるぶん、凄みがある。
 背はすらりと高いし、背中まで伸ばした黒髪も、とっても綺麗。

「さ、ここ座って」
「あ、はい」
 チカちゃんと一緒にいる時にご挨拶したことはあるけど、ちゃんとお話したことは一度もないから緊張しちゃう。
「いらっしゃい。はい、どうぞ」
 緊張をほぐすべく軽く座り直した私の前に、グラスがすっと差し出された。
「え? あ、ありがとうございます……あっ、野崎先輩? あの、おひさしぶりですっ」
 グラスを置いてくれた人に頭を下げてから見上げると、野崎先輩だった。
 びっくりして立ち上がって御礼を言うと、「アイスミントティーなんだけど。ミント、大丈夫かな?」と優しい笑みが向けられてた。
 わ、野崎先輩いらしたのね。全然気づかなかった。というか、紙コップじゃなくグラスでドリンクが出てくるなんて、生徒会室すごいわ。
「ねぇ、亨ちゃん。チカ、蜂蜜もうちょい追加したいー」
「あ、私もー」
「あー、はいはい」
 それから、普通にくつろいで優雅にアイスミントティー飲んでるチカちゃんと藤沢先輩も、なんかすごいわ……ここ、どこのラウンジ?

「涼香ちゃんも蜂蜜を追加したほうがいいよ。入れたげる」
「あっ、ありがと。――わぁ、美味しい。美味しいです!」
 チカちゃんが蜂蜜を追加してくれたアイスミントティー。風味が爽やかで、ほんとにすごく美味しいの。
 野崎先輩が作ったんだって、さっきチカちゃんが教えてくれたから、野崎先輩のほうを見て美味だと伝えた。
 そしたら、「お褒めにあずかり光栄」って、片手を胸にあてて執事さんみたいな礼が返ってきたの。こういう仕草が自然にできるなんて、なんかカッコいい。
 そこまで考えてから、もしも同じことを奏人がやったらって妄想したら、とんでもなく顔が熱くなっちゃったから、慌てて下を向いて残りを飲んで誤魔化した。良かったぁ……アイスティーで……。
「さて、そろそろ本題に入るわね。いい?」
「あ、はい」
 カランっと氷の音を立ててグラスを置いた藤沢先輩が、私のほうに身体を向けてきた。いよいよ、お話が始まるんだ。
「実はね。生徒会主導で行うボランティア活動で、今年は園芸ボランティアをしたいと思ってるの。それで、計画を立てるにあたって、あなたが同じ活動をプライベートで経験してるってチカちゃんから聞いたから、具体的な内容について教えてもらいたいのよ」
「わ、そうなんですか。あの、私でわかる範囲なら、是非お手伝いさせていただきたいです」
 わあぁ、お話って園芸ボランティアのことだったのねっ。
 私が、おばあちゃんと参加してる園芸ボランティアのグループ『花守さん』。参加してまだ一年くらいだけど、学校でも同じ活動ができるなんて、すごく嬉しい! 私でお役に立てるなら、何でもさせてもらおう。


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