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キミとふたり、ときはの恋。【第三話】
Summer Breeze【1−6】
しおりを挟む突然の舌打ちの音に、やっぱり言っちゃいけなかったのかと後悔して煌先輩の顔を見れば、先輩が険しい表情を向けていたのは花宮先生で。
「そうか。白藤さんが……」
「晶。作業の邪魔しに来たんなら帰れよ。皆の迷惑だ」
もう一度、今度は小さく呟いた先生に、鋭い目つきで言い放った。
「……あ? あ、あぁ……そうですね。すみません。様子をを見に来ただけだったのに、皆さんのお邪魔をしてしまいました。では安倍さん、終わったら保健室までお願いします」
ふと我に返った、という表現がぴったりの様子を見せ、忙しなく席を立った花宮先生は足早に視聴覚室を出ていった。
「あ、ジュース。冷たいうちに飲んでくださいね」という気遣いの言葉を残して。
あとに残ったのは、チカちゃんに何やら耳打ちしてる安倍先輩と、苦笑してるチカちゃん。どうしたらいいのかわからなくて、皆の顔を見回す私。それから――。
「ほらよ」
ガサッと音を立てて紙袋から出したジュースとお菓子を皆の机に置き、「飲めば?」と私に声かけしてくれた煌先輩。
あれ? 怒ってない?
険しかった表情が嘘みたいに消え去ったその人が、節くれだった長い指で細いストローをジュースのパックに差していくところまで見守ってから、私も慌てて同じように飲み始めた。
うん、甘くて美味しい。
「うわ、甘ぇ。アイツ、食いもんは二種類入れてるくせにジュースはコレしか買ってねぇって、わざとかよ」
顔をしかめて文句を言いつつも、お兄さんの差し入れのジュースを飲みながら、煌先輩は入力作業に戻った。
トロピカルフルーツジュースを飲んでる煌先輩の姿って、もしかして貴重かも。
そう思ったけど、もう無駄口はきかず、私もチェック作業に戻った。
煌先輩は部活を抜けてきてるし、私とチカちゃんはこの後、生徒会室に行く用がある。
安倍先輩だって、付属大学に進学するとはいえ、三年生なのに夏休みにこうして出てきてくれてる。
皆と、差し入れしてくださった花宮先生のためにも頑張って早く終わらせなくちゃねっ。
「涼香」
全ての作業が終わり、保健室に報告に行った安倍先輩を見送った後、煌先輩に名前を呼ばれた。
「ちょっといいか」
ベランダに向けて親指が立てられ、そこに誘われてるんだとわかった。
「あ……」
チカちゃんをチラ見すると、微笑んで頷いてくれてる。安倍先輩が戻られるまでの間なら、いいかな?
カラッと小さな音を立てて窓が開けられ、先に外に出た煌先輩に続いた。
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