キミとふたり、ときはの恋。【Summer Breeze】

冴月希衣@商業BL販売中

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キミとふたり、ときはの恋。【第三話】

Summer Breeze【1−3】

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「うわぁ、暑ぅ」
 ピロティに出た途端、まばゆい夏の陽光に包まれた。
 梅雨明け宣言後の夏の陽射しは一気にその熱を増したかのように輝き、容赦なく照りつけてきている。
「あ、そうそう。涼香ちゃん。委員会の用が終わったら、少しだけ生徒会室につき合ってもらいたいんだけど、駄目かな?」
「生徒会室? 私が? いいけど……でも生徒会の御用なら、私がいたら、かえってお邪魔じゃないの?」
 美也ちゃんと一緒に時々生徒会のお仕事のお手伝いをしてるチカちゃんだけど、こんな風に私も一緒にって誘われたのは、初めて。
 けど、いつも一緒にお手伝いしてる美也ちゃんならともかく、部外者の私がついて行ったりしたら迷惑にしかならないはずよね。
「あ、違うの。今日は書類仕事があるわけじゃなくて。実はね。突然なんだけど、香子こうこちゃんが涼香ちゃんにお願い事があるって言っててね。だから、一緒に行ってもらってもいいかな?」
「え、藤沢先輩が?」
 チカちゃんが『香子ちゃん』と呼んでいる、三年の藤沢香子ふじさわこうこ先輩。チカちゃんや美也ちゃんとは幼なじみで、藤沢慶太くんのお姉さんだ。そして、生徒会の副会長を務めてらっしゃる方。
 生徒会の副会長さんが、私に『お願い事』って……いったい何かしら。

 チカちゃんはお話の内容について何か聞いてるのかな? もしかして生徒会に関すること?
「ねぇ、チカちゃん。藤沢先輩の『お願い事』って、生徒会に関係ある?」
「ううん、生徒会関連の件じゃないから。そこは心配しなくていいよ。でも内容については、香子ちゃんから直接聞いてもらいたいんだ。駄目かな?」
「ううん、駄目じゃないよ。じゃあ、委員会が終わったら生徒会室に連れて行ってね」
「良かった。よろしくね」
 ホッとしたように笑うチカちゃんに、私も笑い返した。『お願い事』の内容は気になるけど、この言い方だとチカちゃんは内容について知ってるっぽいよね。
 チカちゃんが承知してることなら、大丈夫。チカちゃんについて行って、お話を聞けばいい。それだけだ。
 少し先に見える花壇で、すっくと茎を伸ばしてるヒマワリ。そのレモンオレンジの鮮やかな色が、目に入った。その向こうに広がる、青空も。

 ボストンとの時差は、通常マイナス14時間だけど、今はサマータイムだからマイナス13時間。今、私が見上げてるこの青空は、奏人がいる国では星が瞬く夜空になる。
 空は繋がってる。確かに。
 でも、遠いね。
「……あと、十一日かぁ」
 筋状の雲が白くかすれた色を乗せた空を見上げ、そうとは意識しないまま、小さく呟いていた。


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