キミとふたり、ときはの恋。【立葵に、想いをのせて】

冴月希衣@商業BL販売中

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キミとふたり、ときはの恋。【第二話】

立葵に、想いをのせて【9−5】

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「奏人。わ、私も、寂しいっ」
 うわわ、言っちゃった。
 私ったら、寂しくても我慢して笑ってようって、ついさっきまで決意してたはずなのに、するっと『寂しい』って言っちゃってたわ。
 どこが、『立葵みたいに凛と立っていたい』よ。フニャフニャの決意じゃない。
 あー、でも、待つ立場の私が『寂しい』なんて口に出したりするのは、やっぱり良くないような……。
 置いていく側の奏人にしてみれば、すごく困る、よね?
 きゃー、駄目駄目! それは駄目!
「あのっ、奏人? 今のはね、その……」
「俺たち、同じだね。涼香が正直に今の気持ちを聞かせてくれて、俺、嬉しいよ」
 え?
 前言撤回しようと、囲い込まれた腕の中で慌てて身じろぎすれば、なだめるように背中が撫でられ、『嬉しい』という言葉とともに、コツンっと額が合わせられた。

「あの、いいの? 奏人が寂しがってくれるのはいいけど、私が同じように言うのは……その、迷惑なんじゃないの?」
「え? 迷惑だなんて、全然思わないよ。だって、逢えなくて『寂しい』ってことは、それだけお互いを『好き』ってことだろ? むしろ、嬉しい。だから、もっと『寂しい』って言っていいよ。言われる度、俺得になるから」
「……っ、奏人……かなっ」
 やだ、もう。どうしよう。
 こういう時に、このひとのこと、本当に好きって思っちゃうのよ。
 こんな甘やかすような言葉を、額や頬にたくさんキスを落としながら聞かせてくれる、このひとのことが。

 額、頬、それから耳元へ。しっとりと優しく、奏人の唇が触れてくる。慈しむように。愛おしむように。大切にされてるとわかる触れ方で。
「涼香? ほら、言ってみて? 『寂しい』って。今、聞かせてくれる? そうしたら、俺も同じ言葉を返すから。ね?」
 きっと、奏人はわかってる。私が涙を堪えきれてないこと。
 でも、そっと目尻に指を滑らせるだけでそれには触れず、『わがまま言っていいよ』って甘やかしてくれてる。
 その優しさに応えなくちゃ。そう思った私は、込み上げてくる熱いものを必死で飲み下して、言われた通りにした。
「あのね、寂しいの……私、寂しい。たった二週間でもね、奏人と逢えないのは……すごく、すごく、寂しいっ」
「ん、俺も、――大好きだよ、涼香」
 寂しい、と同じ意味の告白。優しい声色の『大好き』とともに、しっとりと唇が重なってきた。
「ぁ、っ」
 嗚咽を堪えて噛みしめていた唇がそっと解きほぐされ、そこに乗った熱が私を震わせる。
「好きだ。俺、きっと毎日思うよ。寂しいって。だからそのぶん、キス、いい?」


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