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キミとふたり、ときはの恋。【第二話】
立葵に、想いをのせて【9−3】
しおりを挟む身体を離し、じっと見つめた後、穏やかな笑みが向けられた。
「うん、良く似合ってるね。涼香は色が白いから、赤い石が綺麗に映えてる」
「あ、ありがと。えと……奏人も、それ、使ってくれてて嬉しい」
慈しむようなそれを見上げ、少し照れながら私も笑い返した。
「ん。今は、ここにつけとくけど、家に帰ったらちゃんと鍵につけるね。こんなに凝った物を手作りしてくれて、すごく嬉しいよ。ありがとう」
私が贈ったキーホルダー。それは今、奏人の帯に差し込まれてる信玄袋につけられ、その横で揺れている。『せっかくのお揃いだから、今はここにつけとくよ』って言って、身につけてくれた。
いつも持ち歩いてほしいって思ってキーホルダーにしたけど、私の手作りの品をこうやって身につけてくれてるのを見るのも、すごく嬉しいものだ。
私だけの奏人だって実感が湧いてくるっていうか。より強く、それが感じられるっていうか……。
「ねぇ、涼香。そのネックレス、学校でもずっとつけててほしいんだけど」
「あ、うん。そのつもりよ?」
「ん。ありがとう」
私の答えに、とろりとした、満足げな笑みが返ってくる。
校則では、服の中に隠れるなら装身具を身につけててもオッケーだから、ネックレスを選んでくれたんでしょ?
ふふっ。奏人からのプレゼントを、しかもお揃いの品をいつでも身につけていられるなんて、嬉しいな。
あ、でも、厳密には、全くのお揃いじゃないよね。
だってこのネックレス、きっと、すごくお金かかってる。
見たらわかる。これ、たぶんホワイトゴールド、よね? 私がキーホルダーにかけた材料費の十倍以上? それくらいの金額が、かかってるんじゃないかなって思うのよ。
今日は奏人の誕生日なのに、御祝いしなくちゃいけない立場の私が、逆にこんな素敵なお品をいただいちゃって、どうしようって思うわけよ。
奏人とお揃いのお品を身につけていられるのは、すごく嬉しいことだけど。私の手作りキーホルダーとのあまりの格差に、うぬぬぬぬ、なんて唸っちゃうわけなのよぉ。
「しわ、寄ってる」
「ひゃっ!」
わわっ。顔っ……顔、近いです! おまけに、親指で眉間をスリスリされてますっ!
「気にいらなかった?」
「え?」
「ネックレスを持ち上げて難しい顔してるから」
奏人の眉間にも、しわ寄ってるよ?
でも、そっか。私が、プレゼント格差についてうにゃうにゃ考えてたから、変な誤解させちゃったんだね。
「違うの。あのね、素敵すぎるの。すごく素敵なお品だからね? 嬉しいけど、複雑なだけなんですぅ。あ、でも複雑は複雑だけど、嬉しい気持ちのほうがずっと多いから! だから、肌身離さず、毎日身につけちゃうんですっ」
「ふっ。たまに入るその敬語、可愛いね。それに、気に入ってくれてるって再確認できて良かったよ。——ねぇ、涼香。俺、君に言わなくちゃいけないこと、あるんだ。ずっと言いそびれてたんだけど、大事な話だから、聞いてくれる?」
「え……あ、はい」
大事な、お話? 何かしら? というか、奏人のお顔つきがすごく真剣になったから、緊張しちゃう。
「俺、しばらくボストンに行くことになったんだ」
「ボス……トン?」
えーと、ボストンって……もしかしなくても、あのボストン?
え? え? 奏人、アメリカに行っちゃうの?
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