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キミとふたり、ときはの恋。【第二話】

立葵に、想いをのせて【9−2】

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「涼香。実は俺も、涼香に受け取ってもらいたい物、あるんだ」
 キーホルダーをラッピング袋に戻した奏人が、浴衣の帯につけてる信玄袋から何かを取り出した。
「え?」
 その手には、小さな包み。
「開けてみて?」
 そっと手を持ち上げられ、乗せられた軽い箱の感触に、戸惑いながらも鼓動が早まっていく。
 これ、私に?
 え? 今日は奏人の誕生日なのに?
 なんで? どうしてぇっ?
 手に乗せられた包みは、どう見てもプレゼント用とわかる物だから、私の脳内は疑問でいっぱい。
 どうしようって思うけど、『開けてみて』って奏人が言ってるんだから、開けなくちゃよね?
 緊張しながら、そっと包みを開き、中から箱を取り出す。つるりとした手触りの丸い小さな箱。そのふたをゆっくりと開けた。
「わぁ!」
 すぐに奏人の顔を見た。
「どうかな? 気に入ってくれた?」
「うん……うんっ、すごく綺麗!」
 ほんとに、綺麗。
 奏人からのプレゼントは、星のモチーフのネックレスだった。

 リングの中で、ふたつの星が繋がってるデザイン。片方の星には、小さな赤い石が埋め込まれてる。これ、たぶんガーネットだ。
 私の、誕生石。
「ねぇ、このデザインって……」
「あぁ、俺もびっくりしたよ。こんな偶然あるんだな」
 あ、やっぱりそうなんだ。
 苦笑気味にふわりと笑った奏人の様子で、ネックレスを見た時の『もしかして』という私の疑問は確信に変わった。
 このネックレス、私が贈ったキーホルダーと同じ意図を持ってるんだね。
「ほんと、すごい偶然。じゃあ、お揃いになるのね。織姫と彦星で」
 私たちがお互いへのプレゼントに選んだネックレスとキーホルダー。お互いに内緒にしてたはずなのに、同じ『七夕の夜』をテーマにしてるだなんて、偶然にもほどがあるわぁ。でも――。
「俺たち、気が合うね」
「ふふっ、ほんとね。でも、カレカノだから仕方ないんじゃない?」
 たまにしか見られない、奏人のいたずらめいた笑み。それに、同じ笑顔を返せるこの瞬間が、私はとても好きなの。
「貸して? つけてあげる」
「あ、うん」
 私の手から受け取ったネックレスを手に、奏人の腕が横から回ってきた。
 隣同士で座ってるから、身体を覆うように腕を回されて、その腕の中に包み込まれる体勢になってる。
 お互いに黙ってるせいか、奏人の浴衣のたもとが私の肩に乗って、私の浴衣と生地同士が擦れ合う音までが、かすかに耳に届いてくる。
 それが、ふたりの密着具合を私に知らせて、途端に息がしにくくなった。

 あれ? どうしよう。ネックレスつけてくれてるだけなのに、こんなにドキドキしちゃってる。しかも、たぶん顔も赤くなってるわ。
 えーと……まだ、かな? もう、この体勢がなんか苦しいんだけど。手先が器用な奏人にしては、時間かかってるわよね?
 あ、夜だから見えにくいのかしら?
 でも、せっかく奏人がつけてくれてるのに、催促なんてできないもん。もうちょっと待っ……。
「涼香? さっきから、身体がぷるぷる震えてるけど、どうかした?」
「えっ? だっ、大丈夫! 大丈夫だからっ」
 だから早くつけて、この体勢から解放して?
「あぁ、そんな風に俯いたら、可愛いここが丸見えになるよ?」
「え? な……あっ、やぁっ」
 何っ? なんで、うなじにキスっ?

「ずっと我慢してたのに、触れたくなるだろう?」
「あ……かなっ」
 顔の横にある奏人の袂にすがりついて、そこでようやく私は気づいた。その袂の先から出てる奏人の手が、私の肩を掴んでることに。
「奏人? もしかしてネックレス、とっくにつけ終わってたの?」
「あ、気づいた? 涼香がいつ気づくかなって待ってたんだけど、どんどん可愛くなっていくから我慢できなくなったよ」
 全然悪びれてない綺麗な笑みとともに、仕上げのように、もう一度うなじにキスが落ちた。
 うん。今、気づきました。私の学習能力の無さに。


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