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キミとふたり、ときはの恋。【第二話】
立葵に、想いをのせて【8−18】
しおりを挟む気づかれた。絶対、気づかれた。
唇を噛んで俯いた、その時、その手がぎゅっと握り返された。
「けど、それだけだ。確かに、アイツが困ってることがあればほっておけないし、これからも助けるとは思う。でもね、それは武田や秋田、高階たちにするのと同じ感覚なんだよ」
顔を上げるタイミングを失っていた私のあごに、奏人の指先がそっとかかった。
ほんの少しの力が加えられて上向かされ、また目線が絡み合う。屈んだ奏人によって、その距離が詰められた。
「俺にとっての一番大切な女の子は、涼香だけなんだ」
奏人……。
「君だけだよ。こんな風に可愛らしく浴衣を着こなしてる姿を見て、他の男の目から護りたい、隠したいと思うのは」
あごにかかっていた指先が、頬へと滑っていく。
ねぇ、私、だけ?
「俺の彼女だってひと目でわかるように印をつけたいと思うのも、涼香だけだ」
頬のラインを一度そっと撫でた指が、同じそこに添えられた。
私が『一番だ』って、言ってくれてるの? 私が不安にならないように、聞かせてくれてるの?
「君だけは、誰にも渡したくない。ずっと、『俺の一番近くに居てほしい』。こんなことをいつも考えてるのは、涼香だけだ。いや、俺こそが君の一番近くに居たい。そういう存在でありたい」
「奏人……」
「重ねてきた歳月なんか関係ないんだよ。俺にとっての〝女の子〟は涼香ひとりだけだってことを、ちゃんと覚えておいてほしいんだ」
嬉しい。
私、ほんと単純だ。『奏人にとっての女の子は、私だけ』って聞かせてもらえたことが、こんなにも嬉しい。本当に、嬉しいの。
同時に、その言葉の意味に優越感に浸っちゃう嫌な子だってことも、ちゃんと自覚してる。
「涼香。人前だとわかっていても、こうしたいって気持ちを抑えられないのも、君だけなんだ」
密やかに変わった声と、さらに近づいてくる奏人によって暗くなった視界。
たくさんの嬉しい言葉をくれた奏人に応えるべく、少しあごを上げる。
落ちてくる影と熱。それを迎え入れるために、薄く唇を開いた。自分から。
私のヤキモチと独占欲に、真摯に応えてくれてありがとう。『私だけ』って言葉、ここでも、感じさせて?
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