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キミとふたり、ときはの恋。【第二話】
立葵に、想いをのせて【8−17】
しおりを挟む「――あ、こっちの道から行こうか」
「うん」
促され、花菖蒲が群生してる小径に入った。足元のライトに照らされた白と紫の花々は、とても涼やか。
少し先には、同じようにライトアップされた立葵が綺麗に並んでる一角が見える。もう目的地に近づいてたんだ。
「都築と瀧川は、歌鈴が奈良で療養生活に入った後も、ずっと手紙のやり取りを続けてくれてた。誕生日には、連名でプレゼントも贈ってくれてたし……あぁ、誕生日のプレゼントは、今もまだ続けてくれてるな。毎年、家に届けてくれてるよ。それは都築と瀧川だけじゃなくて、秋田と武田も同じようにしてくれてるんだけど」
チカちゃんと武田くんも、歌鈴ちゃんにいまだに誕プレを……。
そっか。皆、本当に仲良しだったんだね。歌鈴ちゃんと。
それから、――奏人とも。
「ちょっと脱線したけど、この話、今まで涼香にしたことなかったから、びっくりしたよね?」
「あ……うん。びっくり、した」
正直に告げると、苦笑ともとれる優しい笑みが、返ってきた。
「歌鈴と都築たちのこと、別に隠してたわけじゃなくて、そういう話題のタイミングにならなかっただけなんだよ。本当に。もし、今までにその話題が出てたら、普通に涼香に話してた。『もし』なんて仮定の言い訳で悪いけど」
「うん、大丈夫。ちゃんとわかってるから」
奏人が嘘を言ってないこと、ちゃんとわかってる。
だって私、知ってる。奏人は、聞かれてもないことをぺらぺらとお話しするタイプじゃない。
でも、尋ねられたことには真剣に答えてくれる人だ。さっき言ってたもの。『私からの質問の答えを続ける』って。『もう少し話しておきたいことがある』って。
私が聞いたから。――だから、これはその『答え』に繋がる、必要なお話なんだ。
緩やかに風に揺れている、立葵の花々のカーテン。何組かの先客が居るその前を通り、ライトアップの光から外れた、奥まった木立の前までいざなわれた。
「――ねぇ? さっき、『俺の一番近くに居たい』って言ってくれたよね?」
そこで、不意に落ちてきた問いかけ。
薄暗さはあるけど、周囲に点々とかかってる祭り提灯の灯りが届く位置でもあるから、奏人の表情ははっきりと見える。
そして、提灯の灯りを反射してる眼鏡の奥の瞳が真剣な光を宿し、真っ直ぐに私に向けられてるのも。
大切なお話が、これから始まる。奏人から伝わる空気で、それがわかった。
「……うん、言ったよ」
だから、私もその瞳を真っ直ぐ見返して、問いに答えるの。
「回りくどい言い方なんて俺にはできないから、単刀直入に言うね。都築は、幼稚舎の頃から知ってる仲だし、バスケ部のマネージャーとしての関わり以上に、歌鈴と過ごした同じ思い出を共有してる、俺にとってかなり近しい幼なじみだよ」
何を言われるのかと、すごくドキドキしてて。でも、自分が望んだことだからと毅然と聞いていようと思ってたの。
でも、駄目な私は『かなり近しい』に、つい反応して、奏人と繋いだ手をぴくんと震わせてしまった。
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