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キミとふたり、ときはの恋。【第二話】

立葵に、想いをのせて【8−15】

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「今から話すことは、俺が言い訳をしたいだけだと受け取られても仕方ない。けど涼香なら、先入観なしに聞いてくれると思うから。だから、少しだけつき合ってほしい」
 言い訳……何の? もしかして、都築さんをほっとけないって思うことの?
 そうかもしれない。けれど、今の私には、選択肢はひとつだけだ。
 黙って、深く頷いた。

「ありがとう。俺が待ち合わせに遅刻した理由なんだけど」
「あ……」
 そうだった。それも、気になってたんだった。
「都築を家まで送ってたから、なんだ」
 家、まで……。
「保健室に運んだ後。花宮先生の判断で念のために整形外科で受診することになって、それに付いて行ったんだよ。で、診察が終わって、俺が家まで送っていった」
「あっ、あの!」
 まだ話の途中だって、わかってた。けど、聞かずにはいられなかった。
「あのっ、どうして奏人が? 花宮先生が……先生が一緒に居たのに、なんで?」
「ん、そう思うよね。これ、涼香はたぶん知らないと思うけど……都築の家は、家庭環境が複雑でね。だから、アイツ自身が花宮先生に家まで送られることを躊躇してた。それがわかったから、というか分かってるから、俺が送っていったんだ」
 都築さんのお家に、そんな事情が……?
 知らない。初めて聞いた。というか、それ、私が聞いてもいいお話なのかな?
 それに、普段、人の噂話は一切しない奏人が、こんな風に踏み込んだ内容を聞かせてくれてるなんて……それだけで、なんだか緊張しちゃう。

 都築さんのお家のこと……都築さんが知らないところで、私が聞いちゃってていいのかな? でも、こうして奏人が話してくれるってことは、いいってことなんだよね?
「お家の事情って……それ、私が聞いてもいい内容なの?」
 そう納得したけど、尋ねる声は緊張で硬くなっていた。
「うん、このことは初等科から一緒のヤツらなら大抵知ってるし。でも涼香の耳には、きっと入ってないよね。アイツに女子の友だちが少ないのは、それが原因でもあるんだけど」
 お友だちが……そういえば、私がたまに見かける都築さんは『ひかるちゃん』って呼ばれてるバレー部の女の子と一緒か、独りで居ることが多かったような……。
「涼香。それ、飲み終わったなら移動しようか。さっき見たいって言ってた、立葵を見に行こう」
「あ、うん」
 まだ話の途中だったけど、私の手からジュースのカップを取り上げながら奏人が立ち上がった。
 そして、カップを持ち上げられる時の感覚で、私がそれをいつの間にか両手でぎゅっと握りしめていたことに気づいた。肩に力が入ってたんだ。
「植物ゾーンのライトアップは二十二時までだから、まだゆっくり見られるよ」
「あ、良かった」
 私の手を引いてくれながら腕時計で時刻を確認する奏人の横顔を見上げ、そんなことまで調べててくれたんだ、と嬉しくなる。お参りの後にチラッと話したことを忘れず実行してくれることにも、嬉しさが込み上げた。
「続きは歩きながら話すけど、いい?」
「うん」
 でも、話を途中で切って立ち上がったのは、私たちが居たベンチの周囲が学生さんたちのグループによって賑やかになったせいもあるかもしれない。デリケートな話題だし……。
「初等科の一年の時にね。アイツの名字が、突然変わったんだ。『都築』に」
「えっ?」


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