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キミとふたり、ときはの恋。【第二話】

立葵に、想いをのせて【7−7】

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 そうだ。私、どうして今まで思い出さなかったのかしら。あの時、そのことでおばあ様に質問だってしたのに。
 ――父親と折り合いが悪い理由? そうねぇ……あの子がそこに居るから、かしら。あの子のせいじゃないのにね。
 謎かけのようなこの言葉が、あの時の私には理解出来なくて。静かに微笑むおばあ様の顔を、ただ見つめてただけのような気がする。
 こうして思い出してみれば、私、すごく無神経だった。
 だって、祖父母と孫の3人暮らしだと聞いて、最初『お父様とお母様は外国にいるの?』なんて尋ねたんだもの。
 それにそれに! 煌先輩にだって、さっき『大家族、いいなぁ』なんて、言ってしまった。さらに無神経だわ。
 でも……煌先輩と萌々ちゃん、それに花宮先生の兄弟仲は悪くはない、よね?
 たまに一緒にいるところを見てる限りでは、お兄さんふたりは萌々ちゃんをすごく可愛がってるように見えるし、萌々ちゃんも口答えしながらも嬉しそうに笑ってる。
 千葉での記憶とすぐに結びつけられなかったのは、仲良し兄弟の場面を見てたから、かな?
 うーん。じゃあ、どうして煌先輩だけが……。
「戻ってきたぞ。何分前だ?」
「え? あっ、太鼓橋! えと、えと、時間は……」
 わわっ、ずっと考え事してたから気づかなかった。もう戻ってきてたんだ。
 慌ててスマホを取り出すと、 タイミングを計ったようにメッセージの着信通知が。
『遅れてごめんね。あと十分で着くから車から降りて待ってて』
 あと十分。良かった。私が、奏人を待ってられる!

「土岐か?」
「あ、はい。あと十分で着くって……あの、ありがとうございました」
「いや。俺の用事につき合わせただけだから、礼は要らない。それに、まだもう少しある」
 え?
 お辞儀から頭を上げると、先に水上橋を歩く広い背中が見えた。
「あのっ、先輩?」
「浮見堂で待つんだろ? あんなことがあったのに、お前を独りきりで待たせられないからな。もう少し、いる」
 慌てて声をかければ、足を止めることなく、チラリと視線が寄越されてきただけだった。素っ気ない口調で。
 私が絡まれてるところを見ちゃったから、ほっとけないって思わせちゃったかな? 申し訳ないわ。
「ごめんなさい。煌先輩はお参りに来ただけだったのに……私が頼りないから、だよね? 奏人にも直前まで車にいるように言われてたのに、勝手に車から降りちゃったの。でも、遅刻してくるなんて知らなかったから……きゃっ」
 二、三人が連れ立って歩くのが精いっぱいな水上橋。他の人の迷惑にならないよう、煌先輩のすぐ後ろを歩いてたから、突然立ち止まった先輩の背中にぶつかった。
「アイツ、遅刻してるのか?」
 え、何? どうして、そんな真剣な表情で……。
「そういうことか……おい。アイツ、遅刻の理由、お前に連絡してきたか?」
 突然立ち止まって質問してくる真剣な瞳と低い声に、戸惑う気持ちでいっぱいなまま、それでも正直に首を振った。
 何か、あったのかしら? 先輩がこんな顔をするような――。
「あの、煌先輩は何か知ってるの? 奏人に何か……」
「アイツの遅刻、たぶん、怪我したヤツがいたからだ。部活中に女子マネが怪我して、土岐が兄貴のところに運んでいった」
 ……え……女子、マネ?


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