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キミとふたり、ときはの恋。【第二話】
立葵に、想いをのせて【5−3】
しおりを挟む「――皆さん、お疲れ様でした。では、再来週の委員会までに今日のレポートをまとめておいてくださいね」
講習会は、無事に終わった。
「涼香ちゃん、お疲れ様」
「あ、チカちゃんもお疲れ様ー」
佐伯先生の言葉の後、皆で『お疲れ様』とねぎらい合う。三時間の講習は、さすがに疲れたかも。
煌先輩は……あれ? いない。あれ?
「ねぇ、チカちゃん。煌先輩がいないけど……」
「花宮くんなら帰ったわよ、とっくに。誰にも何にも言わないで、スーッと、ね。まーったく! とことん自分勝手なんだから」
「えっ? 私、先輩に『お疲れ様』もご挨拶も言ってないのに」
キョロキョロしてた私に、煌先輩がいない理由を教えてくれたのは、安倍先輩。帰っちゃってたなんて、全然気づかなかった。
「ところで白藤さん。花宮くん、講習の間は真面目に取り組んでたみたいだけど、あなたが何か言ってやったの?」
「え……特に、何も言ってないですけど」
手を掴まれてた時のことは、関係ないよね?
「そう? それなら――ただのお気に入り――ってこと?」
「え?」
安倍先輩、今、何て言ったのかしら? 『なら――』の後の言葉は、先輩の口中に低く消えていったために、私には聞き取れなかった。
「涼香ちゃん、ひとりになっちゃうけど大丈夫?」
「えー、大丈夫よ? あと三十分くらいだもん。全然、大丈夫。それより、チカちゃんはおじい様との約束があるんでしょ? 遅刻しないように早く行って? ねっ?」
奏人がここに迎えに来るまでのことを心配してくれてるんだ。でも、三十分くらい、ひとりで待てるわ。笑って手を振って、皆を見送った。
「ふぅ……ちょっと疲れた、かも」
研修センター前の長椅子に座って、ひと息つく。
あ、そういえば、ちょっと気になることがあったかなぁ。
帰る直前、安倍先輩とチカちゃんが皆から離れて、二人だけで何かを話し合ってたみたいなんだよね。で、安倍先輩の視線が時々私に向いてきてたような気がする。
私、何か失敗しちゃってたのかな? ちゃんとやってたつもりなんだけどな。明日、奏人の試合の応援に行く時に、チカちゃんに聞いてみよう。気になるもの。
――ピンポーン
あ、エレベーターの音! 奏人、もう着いたの?
「えっ、どうして?」
エレベーターの到着音に、勢いよく振り向けば。そこから出てきたのは、奏人じゃなく、煌先輩だった。
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