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キミとふたり、ときはの恋。【第二話】

立葵に、想いをのせて【4−2】

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「あの、奏人? 貸してくれてありがとう。汚さないように気をつけたよ?」
 受け取ってくれないシャツをどうしたらいいものかと思いつつ、捧げ持ちながら、もう一度奏人に声をかけてみた。
「……いや、それはいいんだけど。店の中は冷えるからね。次に来る時は、羽織るものを持ってくるといいよ」
「うん、そうする。また来たいもの」
 笑って頷いた私に微笑んだ奏人が、シャツを受け取ってくれて更衣室に戻った。
「ねぇ、チカちゃん。奏人は、あぁ言ってたけど。でも、お店、そこまで冷えてなかったよね? 美也ちゃんだって、半袖だったし」
 その後ろ姿を見ながら、何となく奏人には言いづらかった疑問をチカちゃんに向けてみた。
「ふふっ。テーブルによるのかもよ? 取りあえず、土岐くんの言う通りにしときなよ」
「そうね。うん、そうする」
「ふはっ!」
 ……え?
 突然の笑い声に振り向けば、野崎先輩が大きく肩を震わせて笑っていた。
「チカ。お前、この場にいて、よく吹き出さずに対応できるな」
「亨ちゃん。これは、いわゆる〝慣れ〟ってやつだよ」
「慣れてんのか。それで大体わかった。……そりゃ、奏人も気の毒に」
 わかった、の後は、向こうを向いちゃったから聞こえなかったけど。野崎先輩、私たちのやり取りのことを言ってるのかな?

「会計、終わった?」
「ひゃっ!」
 耳元への不意打ちの声と、肩を抱く手の温もりに、ぴくんと飛び上がった。
「か、奏人? ま、まだ……お会計、まだ終わってな……」
「そう。じゃ、待ってるよ」
 待ってる、と言うわりに、奏人に軽く押されて御園さんと向かい合う形になった。
「青司さん、お願いします」
 あの、奏人? 肩、というか、二の腕をきゅっと掴まれた状態でお会計をする羽目になってるんですけど?
 という問いかけを斜め下から目線で伝えてみたけど、逆にすっごく色っぽい流し目を薄く笑いながら返されて、慌てて正面を向いた。
 その間にお会計を終えていたチカちゃんが私の金額を教えてくれて、もう仕方ないからそのままの体勢でお支払いすることにしたわ。恥ずかしいんだけどね。
「また、おいで」
 優しい笑みを湛えて言葉をかけてくれた御園さんと野崎先輩、それから元気に手を振ってくれたあずさお姉さんに見送られて、お店を出た。もちろん、肩を抱かれたまま。
「涼香。ちょっとつき合ってほしいところがあるんだけど、いい?」
「うん、いいよ?」
 チカちゃんとも別れて、奏人に促されるまま、商店街を抜ける。
 ねぇ? 私も、聞きたいことがあるの。
 ……えーと、どのタイミングで聞けばいいかしら?


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