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キミとふたり、ときはの恋。【第二話】
立葵に、想いをのせて【4−1】
しおりを挟む「お、もう帰るのか?」
「ご馳走様でした。とっても美味しかったです」
十八時を過ぎて、お会計をお願いしに、チカちゃんとカウンターまで行った。
慶太くんと美也ちゃんは、お家の用事があるということで1時間ほど前に帰ったけれど、チカちゃんは奏人を待つ私につき合ってくれていたの。
カウンターにはグラスを磨く野崎先輩の姿だけで、御園さんはおられなかった。
「あの、御園さんは……」
「あぁ、ちょっと待ってね。――青司さん」
ご挨拶がしたくて遠慮気味にお尋ねすると、野崎先輩が奥に向かって声をかけてくれて。
「お、間に合ったか」と言いながら、御園さんが出ていらした。
「はい、これ。お土産」
手に乗せられた透明のセロファンは、まだ温かくて。驚いて目の前に持ち上げると、中にはお花の形のクッキーが可愛くラッピングされていた。
「わぁ、可愛い!」
「可愛いだけじゃなくて、味も美味しいよ。青ちゃんはね、初めて来店したお客様には、お土産を渡してるんだよ。その時によって中身は変わるけど、大抵手作りのお菓子なの。でも、今日みたいにギリギリまで焼いてるのって珍しいね」
私に顔を寄せて一緒にクッキーを見ながらチカちゃんが御園さんに質問した。
「あずさちゃんから、涼香ちゃんは園芸ボランティアをしてるって聞いたからさ。急いで花の形のクッキーを焼いたんだよ。喜んでもらえて良かった」
目尻にしわを作りながら温かい笑みを向けてくれた御園さんに、胸がいっぱいになる。奏人が『青司さんの為人を見てるだけで勉強になる』って褒めてた意味が、初めてちゃんとわかった。
ワイルドな顎ひげの上で形作られた笑みに、私も微笑み返した。
「あの、ありがとうございます。クッキー、すごく嬉しいです」
御礼を言いながら思う。やっぱり、全然怖くない。
「うん、良かったらまた来てね。カフェタイムなら、一人で来ても大丈夫だろ?」
「はい! あのっ。ランチ、とっても美味しかったです。ケーキも。それから、杏仁豆腐もありがとうございました」
嬉しいお誘いをしてくださった御園さんに、気持ちがちゃんと伝わりますようにと、丁寧に頭を下げた。
「昼間なんだし、大丈夫に決まってるよな? いくらお前でも、そこまでは束縛しないだろ?」
「ええ。まぁ、そうですね」
……え?
「奏人っ?」
突然割って入った、野崎先輩と奏人の声に、慌てて頭を上げた。
「お待たせ。――ところで涼香。どうしてシャツを脱いでるの?」
「あっ、お店を出るから返さなきゃと思って」
私服に着替えた奏人に、綺麗に畳んで持っていた白シャツを差し出した。
でも、受け取ってくれない。それどころか、眉間にしわが、くっと寄った。
え? 何で? あれ? もしかして機嫌悪くなってる? どうしてぇ?
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