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第54話 重原愛莉は深みに入る
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愛莉が自分の教科書を忘れたことに気が付いたのは、学校と家の中間距離程度の所であった。
(学校かぁ)
足を止めた愛莉は眉を顰めて空を見上げた。
来た道を戻るというのは、――例え学校でなくても気は進まない。
特に寒いこの時期である。
幾ら防寒具を身に着けているとはいえ寒いものは寒い。
愛莉としては早く帰り暖房の効いた部屋で勉強したいのだが、忘れた教科書も重要参考書。
(あれにはレンに教えてもらった注意点も書かれてるし)
幾ら急成長している愛莉とはいえ完璧ではない。
復習するにも時間が無さすぎた。
結果簾が幾つか出そうな所を教えてそれを教科書に書いているのであった。
簾とのやり取りを思い出し赤くなり始めている空を見上げる愛莉の表情はだらしなく緩んだ。
簾自身の勉強のこともありここ数日は簾の部屋には行っていない。
学校で話しているものの、共にいる時間が少ないため彼の事を思い出すことが多い。
これで付き合っていないのだから驚きである。
スーパーの帰りだろうか。エコバックを手に愛莉とすれ違ったおばさまが不審げに彼女を見ると、愛莉は気が付き顔を引き締めた。
(早く学校に取りに行かないと)
時間は有限。
体を来た方向に向けて愛莉は十二月が迫る寒い道を行った。
★
校門から入り靴を履き替える。
廊下を行くと教員とすれ違う。教科書を取りに来たとだけ説明すると「早く帰るんだぞ」とだけ言われて通された。
愛莉は教員にペコリと頭を下げて教室に向かう。
幾つか部屋を過ぎ自分の教室が近づくと聞き覚えのある声が聞こえて来た。
「重原。全く本当に生意気よね」
「少しくらい成績が良くなったからっていい気になって」
彼女はその声で足を止める。
――クラスメイトの声だ。
しかしあまり交流のしたことのない子。
愛莉とて万人に好かれようとしているわけでは無い。
積極的に交流を持ちたいタイプもいれば持ちたくないタイプもいる。
彼女のスタンスとしては来るものを拒まず去るものを追わず。
先日自分のグループから離れて行った子を受け入れたことからもわかる。
陰でこそこそと言われていることはショックだが、そういう人もいると割り切った。
そして教室に近寄り扉から覗く。
するとそこには簾もいた。
(え? どういうこと?! )
衝撃のあまり身を乗り出そうとしてしまう。
しかしそれをぐっと抑えて扉にしがみつく。出来るだけ気付かれないように聞き耳を立てながら様子を見た。
クラスメイトがカッターナイフを手に取った。
何をするつもりかと彼女達の目線の先を見ると自分の教科書がある。
(それはだめ! )
今度こそ声を上げ乗り込もうとしたが、出来なかった。
「止めておけ」
その言葉を受けた瞬間彼女の全身に電流が走る。
がくがくと足を震えさせて腰を抜かす。
愛莉に向かって放たれた言葉ではない。
しかしながら愛莉の大切なものを守ろうとするその言葉に愛莉は心を爆発さた。
その後彼女の周りが騒がしくなる。
しかし終始教室の中の出来事に集中し感動していた為それに気付かない。
全ての様子を「証拠集め」ということで遠藤冴香に撮られていたことにも気付かない。
簾が教室を出る時に愛莉を発見し「見られてた?! 」と驚くも彼女は気付くことは無かった。
最終的に偶々通りかかった教員に正気に戻され家に帰る。
顔を真っ赤にして帰って来た愛莉を両親は不審がるも「大丈夫! 」と叫ぶように言い恥ずかしさを隠すように部屋に向かう。
バタン! と大きな音を立てて扉を閉めベッドにダイブ。
大きめな枕に顔をうずめ両足をばたつかせ、彼女は心の中で大きく叫んだ。
(レン! すきぃぃぃぃぃぃぃぃ!!! )
後日簾の顔を見る度に顔を真っ赤に染め態度が少しよそよそしくなり簾が「嫌われたのでは?! 」と誤解するのだが、それはまた別の話。
無理やり落ち着かせ誤解を解き愛莉はその日を迎える。
第二学期期末テストが、――始まる。
(学校かぁ)
足を止めた愛莉は眉を顰めて空を見上げた。
来た道を戻るというのは、――例え学校でなくても気は進まない。
特に寒いこの時期である。
幾ら防寒具を身に着けているとはいえ寒いものは寒い。
愛莉としては早く帰り暖房の効いた部屋で勉強したいのだが、忘れた教科書も重要参考書。
(あれにはレンに教えてもらった注意点も書かれてるし)
幾ら急成長している愛莉とはいえ完璧ではない。
復習するにも時間が無さすぎた。
結果簾が幾つか出そうな所を教えてそれを教科書に書いているのであった。
簾とのやり取りを思い出し赤くなり始めている空を見上げる愛莉の表情はだらしなく緩んだ。
簾自身の勉強のこともありここ数日は簾の部屋には行っていない。
学校で話しているものの、共にいる時間が少ないため彼の事を思い出すことが多い。
これで付き合っていないのだから驚きである。
スーパーの帰りだろうか。エコバックを手に愛莉とすれ違ったおばさまが不審げに彼女を見ると、愛莉は気が付き顔を引き締めた。
(早く学校に取りに行かないと)
時間は有限。
体を来た方向に向けて愛莉は十二月が迫る寒い道を行った。
★
校門から入り靴を履き替える。
廊下を行くと教員とすれ違う。教科書を取りに来たとだけ説明すると「早く帰るんだぞ」とだけ言われて通された。
愛莉は教員にペコリと頭を下げて教室に向かう。
幾つか部屋を過ぎ自分の教室が近づくと聞き覚えのある声が聞こえて来た。
「重原。全く本当に生意気よね」
「少しくらい成績が良くなったからっていい気になって」
彼女はその声で足を止める。
――クラスメイトの声だ。
しかしあまり交流のしたことのない子。
愛莉とて万人に好かれようとしているわけでは無い。
積極的に交流を持ちたいタイプもいれば持ちたくないタイプもいる。
彼女のスタンスとしては来るものを拒まず去るものを追わず。
先日自分のグループから離れて行った子を受け入れたことからもわかる。
陰でこそこそと言われていることはショックだが、そういう人もいると割り切った。
そして教室に近寄り扉から覗く。
するとそこには簾もいた。
(え? どういうこと?! )
衝撃のあまり身を乗り出そうとしてしまう。
しかしそれをぐっと抑えて扉にしがみつく。出来るだけ気付かれないように聞き耳を立てながら様子を見た。
クラスメイトがカッターナイフを手に取った。
何をするつもりかと彼女達の目線の先を見ると自分の教科書がある。
(それはだめ! )
今度こそ声を上げ乗り込もうとしたが、出来なかった。
「止めておけ」
その言葉を受けた瞬間彼女の全身に電流が走る。
がくがくと足を震えさせて腰を抜かす。
愛莉に向かって放たれた言葉ではない。
しかしながら愛莉の大切なものを守ろうとするその言葉に愛莉は心を爆発さた。
その後彼女の周りが騒がしくなる。
しかし終始教室の中の出来事に集中し感動していた為それに気付かない。
全ての様子を「証拠集め」ということで遠藤冴香に撮られていたことにも気付かない。
簾が教室を出る時に愛莉を発見し「見られてた?! 」と驚くも彼女は気付くことは無かった。
最終的に偶々通りかかった教員に正気に戻され家に帰る。
顔を真っ赤にして帰って来た愛莉を両親は不審がるも「大丈夫! 」と叫ぶように言い恥ずかしさを隠すように部屋に向かう。
バタン! と大きな音を立てて扉を閉めベッドにダイブ。
大きめな枕に顔をうずめ両足をばたつかせ、彼女は心の中で大きく叫んだ。
(レン! すきぃぃぃぃぃぃぃぃ!!! )
後日簾の顔を見る度に顔を真っ赤に染め態度が少しよそよそしくなり簾が「嫌われたのでは?! 」と誤解するのだが、それはまた別の話。
無理やり落ち着かせ誤解を解き愛莉はその日を迎える。
第二学期期末テストが、――始まる。
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