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第51話 宇治原くん、ご褒美を買いに行く 1

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 テスト本番が近づいて来たある日の事、暖房が効く部屋で勉強していた俺はあることに気が付いた。

「……プレゼントでも用意してあげた方が良いのだろうか? 」

 愛莉あいりの成績は急速に伸びている。
 毎日ある学校の小テストでも満点を取る事が多くなった。
 このままいくと恐らく上位三十位に入れるだろう。

 無論本番当日にならなければわからない。
 彼女の体調もあるだろうし、試験妨害の事もある。
 体調を整え妨害を乗り越えないといけないのだが、逆に彼女が上位三十位に入っていない未来が想像できない。

 学校の成績がほぼ底辺だった彼女の成り上がりだ。
 彼女の類稀たぐいまれなる才能があったからとは言え、今の成績を支えているのは彼女自身の努力。
 ならばその努力にむくいないといけないのではないだろうか。

 俺がやる必要はない。
 もしかしたら愛莉の家族が何かしら用意しているかもしれない。
 何せ上位三十位。
 褒められない事はないと……いや家庭によってはあるか。
 ならば尚更なおさらやるべきではないだろうか。

 俺があげたプレゼントを笑顔で受け取る愛莉。
 想像すると自然とほほが緩むのがわかった。

 ……邪念退散!!!

 しかし褒美としてのプレゼントをあげるにしても俺は彼女の好みを知らない。
 下手へたなものを送るわけにはいかない。
 やはりやめておいた方が無難ぶなんか?
 けど更に向こう側のテストを見越すと、ここらで何かしら褒美を与えていた方がモチベーションを保てると思う。
 見ず知らずの異性に渡されたら恐怖ものかもしれないが知らない仲ではない。

「今度買いに行ってみるか」

 決断し再度机に向かう。
 真っ黒になりかけている教科書をペラペラ捲り暗記問題を復習した。

 ★

 翌日の午後、俺はぶらりと街に出ていた。
 学校終わりということもあって一時帰宅し着替えてバスに乗ってきたわけだが、ここにきて何を買ったらいいのかわからなくなってしまった。

 なお今日の勉強会はお休みだ。
 山を当てるために勉強会を開く人達もいるようだが俺達は逆。
 今までやって来たことの復習を各人で行っている。

「高い物でなくてもいいと思うが」

 厚手あつでの服に身をまとった人達が行きかう中、寒さに震えながら呟いた。

 女性の中には高いものが大好きという人はいるだろう。
 しかし愛莉からはそんな感じは受けない。
 印象もそうだが彼女が持っている道具からもわかる。
 今着ている彼女に選んでもらった服も、——ふところは寂しくなったが、まだ「普通」の範囲内。あれは二式そろえたから高校生の財布を直撃しただけだ。

 質素しっそというほどではないけれど派手好きということでもないだろう。
 もしかしたら見えない所でお金を使っているのかもしれないが、その時は俺の見通しが甘かったということで次に生かすとする。

 ――出来れば喜んでもらいたい。

 可能なら笑顔がこぼれるような物を送りたい。
 もちろん俺は愛莉の彼氏ではない。
 だからといって彼女に贈り物をしてはいけないというわけでは無い。
 決して彼女に好意を持ってもらうために贈り物をするわけでは……、いやちょっとはあるか。

 時々愛莉は装飾品をつけているが、そこから彼女の好きなものを推察すいさつすることは出来なかった。
 後々わかったがつけていたのは少し年季ねんきの入ったもの。少なくとも俺達の世代がつけるものではないようだ。恐らく親から借りてきたのだろう。
 そこまでかざって来てくれているとは男冥利みょうりに尽きる。
 けれど本格的に傾向がわからなくなったのも事実。

 そこでよさげなものをネットで調べて来た。
 大雑把おおざっぱにわかりはしたが結局の所彼女の好きな物がわからないという現実に行き当たった。
 よってこうして街に出て大型ショッピングモールに向かっているわけだが、何を買うかは実物を見てからになりそうだ。

 息を白くする中街を歩く。
 愛莉と出会った時とは全く違う様子を映し出す街に季節が変わったことを実感させられた。
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