46 / 62
第46話 宇治原くんの初デート 6 宇治原くんのファッションショー
しおりを挟む
「美味しかったね」
満足そうに愛莉が言う。
そうだな、と彼女の言葉に頷きながら午後の道を歩いている。
愛莉と一緒にファミレスで食事をとったわけだが、よくよく考えれば彼女だけでなく俺も久しぶりにファミレスにいったな。
トモと息抜きに出かける時はバッフルの中で食べるし、そもそも外食というものをしない。
バッフルの中で食べると言ってもうどんかラーメン。
数百円程度の支出なので、実の所ファミレスの方がお高くついたりする。
しかし今回に限ってはファミレスでよかったと思う。
なにせ愛莉がプリンを食べて幸せそうな顔を見ることができたからだ。
人が幸せそうな顔をすると自分まで幸せになる気がしてくるのは一体何なのだろうか。
わからない。
これが「他人が」なのか「愛莉だから」なのか。
少しモヤモヤするが今考えても仕方ないな。
「次どっか行く? 」
「ん~、そうだな」
少し立ち止まり考える。
愛莉は俺に体を寄せて一緒に立ち止まった。
「今日は俺が振り回している感じだし……、愛莉はどっか行きたい場所はないのか? 」
「ボク? ん~」
俺が聞くと彼女も考えだす。
答えが出たのか俺を見上げてはっきりと言った。
「ないね」
「マジですか」
思わず言葉が漏れて愛莉が笑う。
しかし俺も愛莉もないとなると少々困った。
バッフルの中なら食後にゲームセンターで遊ぶという手があったのだが、今回はそれが使えない。
となると他に遊ぶ場所となるのだが……。
本屋は、論外だな。一時的に勉強を忘れさせるために来ているのにこれは、ない。
ならばカラオケ?
バッフルの中にもあるが街にも当然のようにある。
だが愛莉の歌唱力を知らない。
彼女にとって地雷の可能性もある。加えて俺は歌が得意ではない。ならばこれも違うか。
考え込みながら顔を上げる。
するとそこにはいつもと違う愛莉の姿があった。
違う姿……。
「服を買いに行かないか? 」
「服? 」
「あぁ。俺の服を買いに行くのを手伝ってくれ」
そう言い俺はアパレルショップへ向かった。
★
自分で言うのもなんだが俺は服に無頓着だ。
無難なものしか選ばないし、それに買ったとしても後数年使う自信はある。
だが今回よくわかったのだが女子と一緒に遊びに行く時この服装は褒められたものではない。
これまで女子と一緒に遊びに行くという発想すらなかったから仕方ないと言えば仕方ないのだが、機会がある可能性が出た以上は整えないといけないと考えついた。
よって服を買おうということなのだが服選びに自信のない俺。
ならばおしゃれさんの愛莉に服を選んでもらおうということだ。
我ながら名案。
「本当にボクが選んでも良いの? 」
「任せた」
「わかった! 」
愛莉は元気よく返事をして微笑みかけてくる。
彼女は俺に背を向け店内を見渡す。
ある一角を見つけると「こっち」と足を進めた。
彼女について行くとそこにあったのはセットもの。
「これから寒くなるからね。今は秋だけど過ぎればすぐに冬だから」
「先取ってやつか」
「この中で持っているのある? 」
そう聞かれて商品を見渡し愛莉に向いて答えた。
「ないな」
「なら一先ずインナーとアウターを決めよう」
商品に手をかけ幾つか手に取る。
身長差があるためか俺の肩に商品を合わせるのに背伸びをしている。
「持とうか? 」
「動かない! 」
「はい」
怒られてしまった。
しかし一生懸命探してくれるというのはくるものがあるな。
世の彼氏という存在はこんな気恥ずかしさと嬉しさを感じているのだろうか。
いやいや、いつ俺が愛莉の彼氏になったんだ?
勘違いにもほどがあるな。
けど。
――だったらいいな。
そう、思ってしまうのは……仕方ないじゃないか。
俺が一人気分を上下させている間も愛莉は服を選んでくれた。
そして二パターン選び抜き、次はズボンへ。
そして結局愛莉が選んだものを買って俺達は帰路に就く。
今日初めてお金を貯めていてよかったと思った。
満足そうに愛莉が言う。
そうだな、と彼女の言葉に頷きながら午後の道を歩いている。
愛莉と一緒にファミレスで食事をとったわけだが、よくよく考えれば彼女だけでなく俺も久しぶりにファミレスにいったな。
トモと息抜きに出かける時はバッフルの中で食べるし、そもそも外食というものをしない。
バッフルの中で食べると言ってもうどんかラーメン。
数百円程度の支出なので、実の所ファミレスの方がお高くついたりする。
しかし今回に限ってはファミレスでよかったと思う。
なにせ愛莉がプリンを食べて幸せそうな顔を見ることができたからだ。
人が幸せそうな顔をすると自分まで幸せになる気がしてくるのは一体何なのだろうか。
わからない。
これが「他人が」なのか「愛莉だから」なのか。
少しモヤモヤするが今考えても仕方ないな。
「次どっか行く? 」
「ん~、そうだな」
少し立ち止まり考える。
愛莉は俺に体を寄せて一緒に立ち止まった。
「今日は俺が振り回している感じだし……、愛莉はどっか行きたい場所はないのか? 」
「ボク? ん~」
俺が聞くと彼女も考えだす。
答えが出たのか俺を見上げてはっきりと言った。
「ないね」
「マジですか」
思わず言葉が漏れて愛莉が笑う。
しかし俺も愛莉もないとなると少々困った。
バッフルの中なら食後にゲームセンターで遊ぶという手があったのだが、今回はそれが使えない。
となると他に遊ぶ場所となるのだが……。
本屋は、論外だな。一時的に勉強を忘れさせるために来ているのにこれは、ない。
ならばカラオケ?
バッフルの中にもあるが街にも当然のようにある。
だが愛莉の歌唱力を知らない。
彼女にとって地雷の可能性もある。加えて俺は歌が得意ではない。ならばこれも違うか。
考え込みながら顔を上げる。
するとそこにはいつもと違う愛莉の姿があった。
違う姿……。
「服を買いに行かないか? 」
「服? 」
「あぁ。俺の服を買いに行くのを手伝ってくれ」
そう言い俺はアパレルショップへ向かった。
★
自分で言うのもなんだが俺は服に無頓着だ。
無難なものしか選ばないし、それに買ったとしても後数年使う自信はある。
だが今回よくわかったのだが女子と一緒に遊びに行く時この服装は褒められたものではない。
これまで女子と一緒に遊びに行くという発想すらなかったから仕方ないと言えば仕方ないのだが、機会がある可能性が出た以上は整えないといけないと考えついた。
よって服を買おうということなのだが服選びに自信のない俺。
ならばおしゃれさんの愛莉に服を選んでもらおうということだ。
我ながら名案。
「本当にボクが選んでも良いの? 」
「任せた」
「わかった! 」
愛莉は元気よく返事をして微笑みかけてくる。
彼女は俺に背を向け店内を見渡す。
ある一角を見つけると「こっち」と足を進めた。
彼女について行くとそこにあったのはセットもの。
「これから寒くなるからね。今は秋だけど過ぎればすぐに冬だから」
「先取ってやつか」
「この中で持っているのある? 」
そう聞かれて商品を見渡し愛莉に向いて答えた。
「ないな」
「なら一先ずインナーとアウターを決めよう」
商品に手をかけ幾つか手に取る。
身長差があるためか俺の肩に商品を合わせるのに背伸びをしている。
「持とうか? 」
「動かない! 」
「はい」
怒られてしまった。
しかし一生懸命探してくれるというのはくるものがあるな。
世の彼氏という存在はこんな気恥ずかしさと嬉しさを感じているのだろうか。
いやいや、いつ俺が愛莉の彼氏になったんだ?
勘違いにもほどがあるな。
けど。
――だったらいいな。
そう、思ってしまうのは……仕方ないじゃないか。
俺が一人気分を上下させている間も愛莉は服を選んでくれた。
そして二パターン選び抜き、次はズボンへ。
そして結局愛莉が選んだものを買って俺達は帰路に就く。
今日初めてお金を貯めていてよかったと思った。
17
お気に入りに追加
148
あなたにおすすめの小説

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について
おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である
そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。
なんと、彼女は学園のマドンナだった……!
こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。
彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。
そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。
そして助けられた少女もまた……。
二人の青春、そして成長物語をご覧ください。
※中盤から甘々にご注意を。
※性描写ありは保険です。
他サイトにも掲載しております。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

俺の家には学校一の美少女がいる!
ながしょー
青春
※少しですが改稿したものを新しく公開しました。主人公の名前や所々変えています。今後たぶん話が変わっていきます。
今年、入学したばかりの4月。
両親は海外出張のため何年か家を空けることになった。
そのさい、親父からは「同僚にも同い年の女の子がいて、家で一人で留守番させるのは危ないから」ということで一人の女の子と一緒に住むことになった。
その美少女は学校一のモテる女の子。
この先、どうなってしまうのか!?
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり

モブが公園で泣いていた少女にハンカチを渡したら、なぜか友達になりました~彼女の可愛いところを知っている男子はこの世で俺だけ~
くまたに
青春
冷姫と呼ばれる美少女と友達になった。
初めての異性の友達と、新しいことに沢山挑戦してみることに。
そんな中彼女が見せる幸せそうに笑う表情を知っている男子は、恐らくモブ一人。
冷姫とモブによる砂糖のように甘い日々は誰にもバレることなく隠し通すことができるのか!
カクヨム・小説家になろうでも記載しています!
足を踏み出して
示彩 豊
青春
高校生活の終わりが見え始めた頃、円佳は進路を決められずにいた。友人の朱理は「卒業したい」と口にしながらも、自分を「人を傷つけるナイフ」と例え、操られることを望むような危うさを見せる。
一方で、カオルは地元での就職を決め、るんと舞は東京の大学を目指している。それぞれが未来に向かって進む中、円佳だけが立ち止まり、自分の進む道を見出せずにいた。
そんな中、文化祭の準備が始まる。るんは演劇に挑戦しようとしており、カオルも何かしらの役割を考えている。しかし、円佳はまだ決められずにいた。秋の陽射しが差し込む教室で、彼女は焦りと迷いを抱えながら、友人たちの言葉を受け止める。
それぞれの選択が、少しずつ未来を形作っていく。

クラスメイトの王子様系女子をナンパから助けたら。
桜庭かなめ
恋愛
高校2年生の白石洋平のクラスには、藤原千弦という女子生徒がいる。千弦は美人でスタイルが良く、凛々しく落ち着いた雰囲気もあるため「王子様」と言われて人気が高い。千弦とは教室で挨拶したり、バイト先で接客したりする程度の関わりだった。
とある日の放課後。バイトから帰る洋平は、駅前で男2人にナンパされている千弦を見つける。普段は落ち着いている千弦が脚を震わせていることに気付き、洋平は千弦をナンパから助けた。そのときに洋平に見せた笑顔は普段みんなに見せる美しいものではなく、とても可愛らしいものだった。
ナンパから助けたことをきっかけに、洋平は千弦との関わりが増えていく。
お礼にと放課後にアイスを食べたり、昼休みに一緒にお昼ご飯を食べたり、お互いの家に遊びに行ったり。クラスメイトの王子様系女子との温かくて甘い青春ラブコメディ!
※続編がスタートしました!(2025.2.8)
※1日1話ずつ公開していく予定です。
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、いいね、感想などお待ちしております。
幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた
久野真一
青春
最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、
幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。
堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。
猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。
百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。
そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。
男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。
とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。
そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から
「修二は私と恋人になりたい?」
なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。
百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。
「なれたらいいと思ってる」
少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。
食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。
恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。
そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。
夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと
新婚生活も満喫中。
これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、
新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる